第19話 家族
ヴィランズの狙いが群馬県だと知った時、博樹の胸にひとつの思いが浮かんだ。
――父さんの行方も、群馬県を追えば何か掴めるかもしれない。
博樹の父・山田真
行方不明になって十数年。
その影は、いつも博樹の心の奥に残っていた。
伯父・井出彬は、今でこそ横浜の食堂の店主だが、かつては携帯電話製造会社の社長だった。
その会社で父と母は出会い、父は社長にまで上り詰めた。
その時に伯父は会長になった。
会社は急成長し、携帯キャリア事業に参入し、さらにAIやロボット開発にも手を伸ばした。
その会社の名は――イデア社。
博樹が今、共同研究している企業だ。
社名の由来は、起業者であった伯父の井出彬から3文字を取った。
しかし、順風満帆だった当時のイデア社に突如として暗雲が立ち込めた。
父が会社の資金に手を付け、10億円の使途不明金を出してしまったのだ。
警察沙汰にはならなかったが、「退職金として10億円を受け取った」という形で会社を去った。
その日を境に、父は母・愛と幼い博樹を残して、姿を消した。
伯父も義弟のやらかしたことの責任を感じて会社を辞め、退職金で横浜のビルを購入し、その1階で食堂を始めたのだった。
そして―― 20階の部屋を、博樹と母に無償で貸してくれた。
「父さんは……なにに10億円を遣ったんだろう」
博樹は、吸血鬼事件のドローン制作費を思い出した。
1台20万円。 5千台で10億円。
――もし、あの費用が父の金だったとしたら?
タイニー・エヴォルブが言っていた 「何等かの意図を持つ人間」の存在。
その人間こそ、父・山田真ではないのか。
胸の奥がざわつく。
「……父さんは、どこで何をしているんだ」
博樹は、糸口になりそうなことがあれば、自分で探りたくなってしまう。
今はHEROという頼れるバディがいる。
首を突っ込むなと言われても、それはもう無理だった。
HEROは目的のために手段を選ばない可能性もある。
だが――その頭脳も、変身能力も、超視覚も超聴覚も、今の博樹には必要だった。
「父さんの謎を解くためにも…… ヴィランズを追うしかない」
博樹は静かに決意した。




