第18話 探偵誕生
ライブ会場からの帰り道。
博樹は、ヴィランズがロボットから人間へ変化した瞬間を想像していた。
――あれはHEROと同じナノマシンなのか?――それとも、まったく別の技術なのか?――能力なのか?
それとも……異質な存在なのか?
考えれば考えるほど、答えは霧の中へ消えていく。
だが一つだけ確かなことがあった。
ヴィランズはテレビ出演で観客を洗脳し、都内のライブステージでも同じことをしていた。
「これは……事件だよな」
HEROも頷いた。
「危険だと思う。人の意識を操作することは、許されない」
二人は研究室に戻ると、すぐに福島教授へ報告した。
教授は深刻な表情で言った。
「相手の能力が不明である以上、警察でもない君たちが関わるのは危険だ。吸血鬼事件の時にお世話になった多胡刑事に相談しなさい」
◆ 警視庁へ
翌日、二人は霞が関にある警視庁を訪れた。
上空から見るとアルファベットの“A”の形をしている巨大な建物だ。
受付で多胡刑事を呼んでもらうと、刑事はすぐに迎えに来てくれた。
狭い部屋に通されると、窓には鉄格子のような枠がはまっていた。
博樹は思わず心の中でつぶやいた。
(かつ丼はいつ出るんだろう)
そんな冗談を考えていると、多胡刑事が言った。
「HERO君が何かやらかしたのかい?」
「そうじゃありません。むしろ、事件性のあることを発見し、通報しに来ました」
博樹はヴィランズの洗脳計画、 黒ずくめの男たちの変身能力、 群馬県の地下資源を狙っていることなどを説明した。
多胡刑事は真剣に聞き、静かに言った。
「HERO君が人に擬態できるなら、同じような者がいても不思議じゃない。ただし、ヴィランズはロボットから人間に擬態した……正体は不明だ。サブリミナル効果は法律では禁止されてはいないが、テレビ局は自主規制している。それを出演者が勝手にやっているなら、視聴者に害を与える行為だ」
多胡刑事は深く頷いた。
「さっそく警視庁が捜査に入る。君たちはこれ以上首を突っ込まないように」
二人は約束し、警視庁を後にした。
◆ 探偵HERO、誕生
研究室に戻ると、博樹はすぐに新しいデバイスの設計に取りかかった。
「超聴覚と超視覚を追加する。壁の向こうの会話や、遠くで起きている犯罪をもっと鮮明に録音・録画できるようにするんだ」
設計は以前からやってきたので1時間で終わり、部品も研究室に揃っていたため、デバイスはすぐに完成した。
家に帰り、食堂の手伝いと風呂の準備を終えると、博樹はデバイスドライバを作成し、ベータ式ビデオテープにバックアップした。
その間に母も帰宅し、風呂に入っていた。
HEROにデバイスドライバプログラムをインストールすると、HEROは遠くの音を聞き取り、テレスコープのように遠方を見通せるようになった。
「これで……探偵HEROの誕生だな」
HEROは髪色・瞳・服装をナノマシンで変えられる。
自我を持ち、考えて行動ができる。
まさに、優秀な探偵そのものだった。
博樹は次の研究テーマを決めた。
「犯罪捜査へのロボットの活用について」
多胡刑事は、二人がもう関わらないと思っていたが――その予想は大きく外れることになる。




