第15話 吸血鬼事件の終わり
タイニー・エヴォルブがHEROに融合したのは偶然ではない。むしろ――「HEROにたどり着くことこそ目的だったのではないか」と博樹は考え始めていた。
もしそうなら、 エヴォルブ本体も目的達成のためには手段を選ばない存在なのかもしれない。
胸の奥に、不安がじわりと広がる。
だが同時に、博樹は思った。
――新しいHEROがどんな行動をするかを見てから判断すればいい。
吸血鬼事件については、科学技術政策担当大臣を中心に政府が判断を下した。
タイニー・エヴォルブの行動は、 「人を救うためのものだった」 という側面が考慮され、実際に骨髄移植のドナーが爆発的に増えたことも評価された。
その結果――
HEROは博樹やイデア社だけでなく、警察の監視下にも置くことを条件に、研究を続けることが許された。
博樹もHEROも悪くない。
大学にも罪はない。
イデア社のエヴォルブ本体については、「安全を確保して進化実験をするように」 という国からの指導ががあった。
◆吸血鬼ドローン
吸血鬼ドローンは誰かの手により町工場に5千機も発注されていた。
その費用はその人物が支払いをしていた。
だが―― その人物の名前はわからない。
町工場には設計図と現金10億円、納入先が書いてあるメモだけが届けられただけだった。
警察が町工場を捜査すると、工場側は「吸血鬼事件に使われているとは知らなかった」と証言した。
しかし、ドローンの大量発注のおかげで倒産寸前だった工場は持ち直し、社員や家族の生活が救われ、ありがたかったのは間違いないという。
警察は工場に罪はないと判断した。
国民を安心させるため、 押収したドローンを公開し、「もう吸血鬼事件は起こらない」 と報道した。
ただし――犯人は捕まっていないため、捜査は継続中だと発表された。
博樹はニュースを見ながら、胸の奥に重い影が落ちるのを感じた。
――5千機のドローン――現金で支払われた10億円――発注者は不明
誰かが事件の裏で糸を引いていることは明白だった。
そして博樹は、その“誰か”の顔を思い浮かべてしまった。
行方不明の父――山田真
「……父さん。あなたはどこで、何をしているんだ」
胸の奥で、答えのない問いが静かに響いた。




