第四話「近づく音」
松原が死んだ。
その知らせを聞いた瞬間、残った六人は言葉を失った。
平。
木村。
森村。
木下。
石井。
植田。
昨日まで八人で笑っていた。
くだらない肝試し。
ただの遊び。
それが今では、二人が死んでいる。
しかも。
二人とも同じ言葉を残していた。
――鐘の音。
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警察は事故として調査していた。
しかし、平たちは知っていた。
これは事故じゃない。
あの神社で鳴らした鐘。
あれが原因だ。
「もう一度、神社に行くしかない」
平が言った。
全員が平を見る。
「正気か?」
石井が震えた声で言う。
「またあそこに行くのか?」
「行かなかったら、次は俺たちだ」
誰も否定できなかった。
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その夜。
木村だけは一人で古い資料を調べていた。
神社。
鐘。
巫女。
呪い。
いくつもの古い記録を読み漁る。
そして。
一枚の古文書を見つけた。
そこにはこう書かれていた。
『鐘は人の罪を聞く』
『愛を知りし者の魂を求める』
『最後の一人になるまで鳴り続ける』
木村の手が止まった。
最後の一文。
『逃げた者には、最も深い音を与える』
「……」
木村は震えた。
逃げても終わらない。
なら。
止めるしかない。
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その頃。
森村は自宅で眠れずにいた。
部屋は明るい。
テレビもつけている。
音が怖かった。
静かになると。
あの音が聞こえる。
ゴォーン……
「……」
森村は時計を見る。
午前0時。
まだ早い。
なのに。
聞こえた。
ゴォーン……
一回。
そして。
ゴォーン……
二回。
森村は息を止めた。
「昨日より……」
近い。
確実に。
近い。
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森村は玄関へ走った。
外へ出ればいい。
誰かの家へ行けばいい。
そう思った。
しかし。
ドアノブを掴んだ瞬間。
後ろから音がした。
金属が擦れる音。
ギィ……
森村はゆっくり振り返る。
部屋の壁。
そこに。
黒い線が浮かんでいた。
円形。
まるで。
巨大な鐘が壁の向こうにあるように。
「嘘だ……」
線が膨らむ。
壁が歪む。
そして。
部屋の中に。
巨大な鐘の影が現れた。
森村は叫びながら逃げる。
しかし。
足が動かない。
見えない何かに押さえつけられる。
ゴォーン……
鐘の音。
ゴォーン……
音が鳴るたび。
体が床へ沈む。
「助けて……」
最後に森村が見たもの。
それは。
鐘の表面に浮かぶ。
女性の顔だった。
泣いているような。
怒っているような。
その口が動く。
「三人目」
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翌朝。
平たちは森村の死亡を知った。
もう耐えられなかった。
「次は誰だ?」
木下が震える。
誰も答えない。
しかし。
植田の顔から血の気が引いた。
「……」
「どうした?」
平が聞く。
植田は震える指で窓を指した。
外。
遠くの山。
昨日まで見えなかったはずの神社の方向。
そこから。
音がした。
ゴォーン……
一回。
ゴォーン……
二回。
そして。
三回。
植田が呟く。
「……近づいてる」
木村は気付いた。
鐘の音は。
山から来ているんじゃない。
もっと近い。
すぐそば。
まるで――
部屋の中から聞こえている。
その瞬間。
植田の後ろで。
誰も触れていないドアが。
ゆっくり開いた。
ギィ……
暗闇の奥から。
鐘の音。
ゴォーン……
四人目の名前が。
呼ばれる。




