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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第一章「鳴らしてはいけない鐘」

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第三話「一つ目の鐘」

翌朝。


平は何度も坂本に電話をかけていた。


しかし。


出ない。


既読もつかない。


「昨日のあれ……」


松原が不安そうにつぶやく。


「まさか、本当に……」


「やめろ」


平が遮る。


「ただ寝てるだけだ」


そう言い聞かせるように言った。


だが、その声には自信がなかった。



---


坂本の家に向かったのは、平、木村、松原、森村、石井、植田、木下の七人だった。


インターホンを押す。


反応なし。


何度押しても。


静まり返っている。


「坂本!」


平が叫びながらドアを開ける。


鍵は開いていた。


嫌な予感がした。


部屋の中は荒れていなかった。


机。


テレビ。


ソファ。


昨日と何も変わらない。


ただ一つ。


部屋の中央に置かれたスマホだけが異様だった。


画面には録音アプリ。


再生時間。


午前2時13分。


「これ……」


木村が手に取る。


「最後に録音したのか?」


平が止めようとした。


「やめた方がいい」


しかし。


森村が再生ボタンを押した。



---


最初。


何も聞こえない。


ただ、坂本の荒い呼吸。


『誰だ……』


『やめろ……来るな……』


そして。


遠くから。


ゴォーン……


全員の顔が固まった。


録音の中でも鐘の音がしている。


ゴォーン……


ゴォーン……


音が近づいてくる。


坂本の声が震える。


『違う……』


『こんな場所に鐘なんて……』


『やめろ……!』


突然。


録音が途切れる。


数秒の無音。


そして最後。


小さな声。


坂本ではない。


女の声。


『一人目』


そこで録音は終わった。



---


その日の昼。


坂本は山の近くで発見された。


警察は事故として処理しようとした。


しかし。


現場を見た全員が違和感を覚えた。


坂本の周囲には何もない。


なのに。


地面には巨大な円形の跡が残っていた。


まるで。


巨大な鐘が落ちたような跡。


そして。


坂本の耳からは血が流れていた。



---


帰り道。


七人は誰も喋らなかった。


車の中。


木村だけが窓の外を見ていた。


「なあ……」


平が聞く。


「お前、本当に何も聞こえてないのか?」


木村は黙った。


そして答える。


「……聞こえない」


「じゃあ、なんで?」


「昨日からずっと感じてる」


木村の顔は青かった。


「何かが、俺以外を選んでる」


その言葉に誰も返事できなかった。



---


夜。


松原は自宅のベッドで震えていた。


坂本が死んだ。


次は誰なのか。


考えたくなかった。


時計を見る。


午前2時。


その瞬間。


部屋の電気が一瞬だけ消えた。


そして。


聞こえた。


ゴォーン……


松原の心臓が止まりそうになる。


一回。


二回。


三回。


昨日より近い。


「嘘だろ……」


松原は耳を塞ぐ。


だが音は消えない。


むしろ。


耳の奥から鳴っているようだった。


ゴォーン……


ゴォーン……


そして。


部屋の隅。


暗闇の中に。


巨大な影が立っていた。


人の形ではない。


丸く。


巨大で。


揺れている。


松原は声を失った。


影がゆっくり近づく。


その瞬間。


影の奥から声がした。


「二人目……」


翌朝。


松原の部屋から。


また鐘の音だけが録音されていた。



---


残った六人は気付く。


この呪いは。


一人ずつ。


順番に。


近づいてくる。

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