第一話「終わったはずの都市」
— 完 —
と表示されたはずの画面は、どこにも“終わり”を持っていなかった。
むしろそこからが、始まりだった。
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ゴォォン……
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その音は、もう物語の外ではない。
読む者の視線の奥で鳴っている。
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ある編集者は原稿を閉じた瞬間に気づく。
「……まだ続いてる?」
印刷された紙の余白に、うっすらと円が浮かんでいる。
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別の読者はスマートフォンを見ている。
ページの最後までスクロールしたはずなのに、画面が勝手に戻る。
そして同じ一文が表示される。
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「まだ鳴っている」
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ゴォォン……
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都市。
駅。
山。
神社。
それらはもう区別されない。
ただ“同じ層の違う呼吸”として存在している。
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そして、そのどこか。
ひとりの人物が目を開ける。
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名前はまだない。
だが、音には気づいている。
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「……またか」
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声は乾いている。
恐怖ではない。
疲労でもない。
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それは、何度も繰り返した者の声だった。
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周囲には誰もいない。
しかし彼は知っている。
これは“単独”ではない。
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ゴォォン……
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音が鳴るたびに、空間の奥から何かが浮かび上がる。
山の神社の記憶
鐘の内側の構造
都市の重なり
選ばれた青年たちの断片
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それらは、すでに過去ではない。
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彼は立ち上がる。
足元に円はない。
しかし確かに“反応”はある。
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「今回は、どこまで崩れた?」
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誰に問うわけでもない。
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その瞬間、空間の奥から声が返る。
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『まだ浅い』
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ゴォォン……
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彼は目を細める。
「浅いなら、まだ戻せるな」
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だがその言葉の直後。
空間がわずかに“ずれる”。
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違和感ではない。
再配置。
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都市の位置が、ほんの少しだけ変わる。
山の高さが変わる。
駅の構造が変わる。
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そして彼は理解する。
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「また始め直す気か」
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ゴォォン……
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音が答える。
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第四章・第二話
「再起層」へ続く。




