第十二話(最終話)「まだ鳴っている」
ゴォォン……
音は、最初からそこにあったように自然だった。
誰も驚かない。
誰も恐れない。
ただ、気づいた者だけが“少し立ち止まる”。
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世界は変わっていない。
都市は都市のまま動き続けている。
駅は人を運び、信号は規則通りに変わる。
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だがそのすべての“間”に、鐘がある。
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青年だったものは、もう存在しない。
木村も、鈴音も、平も。
それらは「人物」としては消えている。
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しかし完全に消えたわけではない。
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ゴォォン……
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それは都市のどこかで鳴る。
山でも、駅でも、誰かの部屋でもない。
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世界の構造そのものの奥行き。
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白い影もない。
核鐘もない。
未定義領域もない。
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それでも“仕組み”は残っている。
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ある日、ひとりの子どもが言う。
「今、音したよね」
母親は笑って答える。
「何もしてないわよ」
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しかし子どもは空を見上げる。
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そこには、見えない円がある。
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ゴォォォン……
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音は弱い。
だが消えない。
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それは警告でも、呪いでもない。
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継続そのもの。
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どこかでまた、誰かが立ち止まる。
理由もなく。
説明もなく。
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そして“聞いてしまう”。
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ゴォォン……
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鐘はもう終わらない。
始まりも終わりもなく。
ただ、続いている。
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そしてその続きの中で。
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また新しい誰かが、最初の一音を聞く。
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— 完 —




