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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第三章「鐘哭都市(しょうこくとし)」

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第十二話(最終話)「まだ鳴っている」

ゴォォン……


音は、最初からそこにあったように自然だった。


誰も驚かない。


誰も恐れない。


ただ、気づいた者だけが“少し立ち止まる”。



---


世界は変わっていない。


都市は都市のまま動き続けている。


駅は人を運び、信号は規則通りに変わる。



---


だがそのすべての“間”に、鐘がある。



---


青年だったものは、もう存在しない。


木村も、鈴音も、平も。


それらは「人物」としては消えている。



---


しかし完全に消えたわけではない。



---


ゴォォン……



---


それは都市のどこかで鳴る。


山でも、駅でも、誰かの部屋でもない。



---


世界の構造そのものの奥行き。



---


白い影もない。


核鐘もない。


未定義領域もない。



---


それでも“仕組み”は残っている。



---


ある日、ひとりの子どもが言う。


「今、音したよね」


母親は笑って答える。


「何もしてないわよ」



---


しかし子どもは空を見上げる。



---


そこには、見えない円がある。



---


ゴォォォン……



---


音は弱い。


だが消えない。



---


それは警告でも、呪いでもない。



---


継続そのもの。



---


どこかでまた、誰かが立ち止まる。


理由もなく。


説明もなく。



---


そして“聞いてしまう”。



---


ゴォォン……



---


鐘はもう終わらない。


始まりも終わりもなく。


ただ、続いている。



---


そしてその続きの中で。



---


また新しい誰かが、最初の一音を聞く。



---


— 完 —

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