↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第三章「鐘哭都市(しょうこくとし)」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/58

第二話「円の再出現」

時計が再び動き出した瞬間、駅の空気は“何事もなかったように”流れ始めた。


人々は歩き出す。


電車は到着する。


アナウンスも正常に戻る。


しかし青年だけは気づいていた。


「戻ってない……」



---


ホームの床。


さっきまでなかったはずの“薄い円形の痕跡”が残っている。


黒でも白でもない。


ただ、見てはいけない形の輪郭。



---


ゴォォン……



---


その音は、もう“外から聞こえるもの”ではなかった。


駅そのものが発しているように感じられる。



---


青年は一歩後退する。


すると円の中心が、わずかに沈む。


まるで“呼吸”しているように。



---


その時、ホームの反対側で叫び声。


「おい、何だこれ!」


サラリーマン風の男が床を指さしている。


しかし周囲は誰も反応しない。



---


見えているのは一部の人間だけ。



---


円は、少しずつ増えていた。


ホームの端にもう一つ。


改札の近くにもう一つ。


階段の下にも。



---


それぞれが“独立したもの”ではない。


すべてが繋がっている。



---


青年は理解する。


「これは……広がってるんじゃない」


「増えてる」



---


ゴォォォン……



---


その音に合わせて、円が一斉に反応する。


駅の照明が一瞬だけ落ちる。


そして戻る。



---


その“隙間”に、何かが立っていた。



---


白い影。


顔はない。


だが輪郭ははっきりしている。



---


鈴音ではない。


しかし、鈴音に“似た構造”。



---


影は円の中心を見下ろしている。


まるで確認するように。



---


青年の耳に声。


「再接続が完了していく」



---


青年は叫ぶ。


「お前は誰だ!」



---


返事はない。


代わりに、駅全体の広告モニターが一斉に変わる。



---


『円は再起動した』



---


ゴォォォン……



---


その瞬間、青年の足元の円が一気に広がる。


ホーム全体へ。


線路へ。


天井へ。



---


空間が“面”ではなく“層”として変わっていく。



---


青年は気づく。


これは侵食ではない。


再構築だ。



---


その時、改札の向こうから誰かが走ってくる。


見覚えのない学生。


息を切らしながら叫ぶ。


「おい!これ見えないのか!」



---


青年は答えられない。


その学生の背後にも、円がある。



---


さらに別の声。


「止まれ!」


「ここ危ない!」



---


しかし誰も“何から危険なのか”説明できない。



---


ゴォォン……



---


音が重なる。


円も重なる。



---


駅全体が、ゆっくりと“鐘の構造”に変わっていく。



---


その中心で、白い影が一言だけ呟く。


「外側の記憶が戻ってきている」



---


青年は理解する。


これは新しい侵食ではない。



---


以前の崩壊の“続き”だ。



---


第三章・第三話


「記憶の重なり」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。