↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第三章「鐘哭都市(しょうこくとし)」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/58

第一話「聞こえるはずのない音」

その日、誰も異常に気づいていなかった。


ただ一つを除いて。


「音が、遅れてる」


大学生の青年は、イヤホンを外しながら呟いた。


電車のホーム。


アナウンスが鳴る。


しかし、声が“意味より先に消える”。



---


「……今の、聞いたか?」


隣にいた友人は首をかしげる。


「何が?」


「いや、今……変な音が」



---


ゴォォン……



---


その瞬間、ホームの空気がわずかに沈む。


しかし誰も気づかない。


誰も“それを音として認識できない”。



---


都市は正常に動いている。


だが、内部だけが少しずつズレている。



---


同時刻。


山間部の無人神社跡。


そこに新しい“鐘の影”が現れていた。


形はない。


しかし、存在している。



---


その中心で、小さく何かが動く。


人影。



---


顔は見えない。


だが確かに“意識”がある。



---


その存在は、初めて声を発した。


「……ここか」



---


ゴォォン……



---


音は返事のように鳴る。



---


都市へ戻る。


青年は駅のベンチに座っている。


スマートフォンを見ても異常はない。


だが画面の端に、小さな黒い点がある。



---


それは、少しずつ広がっていた。



---


友人が言う。


「お前、顔色悪いぞ」


青年は答えようとして、止まる。



---


“音”が来る。



---


ゴォォォン……



---


今度ははっきり聞こえる。


しかし周囲の誰も反応しない。



---


青年だけが立ち上がる。


「……聞こえるのか?」


誰に向けた言葉でもない。



---


その瞬間。


駅の天井に“円形の影”が浮かぶ。



---


都市のどこかで、同時に同じ影が発生している。


高層ビル


学校


病院


住宅街




---


すべての場所に、“鐘の気配”。



---


青年の耳元で声がする。


木村の声ではない。


鈴音でもない。


もっと古い、重いもの。



---


「戻り始めた」



---


青年は振り返る。


そこには何もない。


だが確実に“見られている”。



---


ゴォォン……



---


その音とともに、駅の時計が一瞬止まる。



---


そして再び動き出すとき。



---


世界は、少しだけ違っていた。



---


第三章・第二話


「円の再出現」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。