第二十二話「鐘の継承」
円はゆっくりと閉じていく。
平の足元から始まったその輪は、逃げ道を消すためではない。
“選択肢そのもの”を圧縮していた。
ゴォォン……
鐘の音が鳴るたびに、空間の層が一枚ずつ剥がれていく。
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平は後退する。
だが足は動かない。
正確には、“動く先がない”。
そこにはすでに、すべての可能性が重なっている。
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木村の影が揺れる。
「平……まだ選べる」
その声は、人のものではなかった。
鐘の共鳴。
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「何をだよ!」
平は叫ぶ。
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鈴音が静かに歩み出る。
彼女はもう“巫女”という形ではない。
鐘の輪郭の一部として存在している。
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「継ぐの」
鈴音の声。
「この鐘は壊れない」
「だから、誰かが“形”を変え続ける」
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ゴォォォン……
鐘が鳴る。
空間が一瞬だけ“薄くなる”。
その隙間に、平は見た。
無数の都市。
無数の神社。
無数の鐘。
それらがすべて繋がっている。
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「これは一つじゃない……」
平が呟く。
鈴音は頷く。
「連鎖」
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木村の輪郭が崩れ始める。
「平……急げ」
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平は一歩踏み出す。
その瞬間、記憶が流れ込む。
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坂本の記憶。
松原の記憶。
森村の記憶。
木下の記憶。
石井の記憶。
植田の記憶。
そして木村の記憶。
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すべてが“鐘の中の音”として再生される。
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平は理解する。
「俺たちは……もう何回も繰り返してる」
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鈴音が目を伏せる。
「そう」
「あなたは“七回目”」
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ゴォォォォン!!!
鐘が鳴る。
空間が完全に収束する。
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鈴音が最後に言う。
「継ぐなら、外へ出られる」
「拒めば、ここで音になる」
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平の前に、二つの道が現れる。
一つは“外側へ続く裂け目”。
もう一つは“鐘の中心”。
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木村が叫ぶ。
「平!選べ!」
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平は止まる。
息を吸う。
鐘の音が止まる。
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静寂。
そして――
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ゴォォン……
最後の一音。
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平は一歩を踏み出す。
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第二章・第二十三話
「継承者」へ続く。




