↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第二章「消えた巫女」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/58

第十八話「鐘が外にある日」

平は朝、目を覚ました瞬間に違和感を覚えた。


天井が低い。


部屋が狭い。


いや、正確には“部屋の距離感”が変わっている。


深呼吸をしたとき、胸の奥にわずかな振動があった。


ゴォン……


一瞬だけ、鐘の音。


しかし外からではない。



---


平は洗面台の鏡を見る。


そこに映った自分の顔が、ほんのわずかに遅れて動く。


「……なんだこれ」


指を動かす。


遅れる。


瞬きをする。


遅れる。



---


その時、スマートフォンが震えた。


圏外は解除されている。


通知が一気に流れ込む。


しかし、その中に混じっていた。


知らない音声ファイル。


再生する。



---


ゴォォォン……


静かな鐘の音。


その後に、木村の声。


『平……聞こえるか』


平は息を呑む。


『もう“外”は外じゃない』



---


録音はそこで途切れる。


代わりにノイズ。


そして最後に、鈴音の声。


『鐘は移動した』



---


平の手が震える。


「……移動?」



---


外に出る。


朝の街はいつも通りに見える。


だが、何かが違う。


信号の音が一瞬ずつずれている。


人の会話が途中で途切れる。


犬の鳴き声が反響しない。



---


平は気づく。


世界全体が“薄い膜”の中にある。



---


その時だった。


ゴォォォン……


遠くではない。


街のどこか。


ではなく――


街そのものの“奥行き”から鳴った。



---


人々は気づかない。


平だけが振り向く。


ビルの谷間。


そこに“歪み”がある。


円形。


ゆっくりと広がる。



---


ゴォォォン……


二度目。



---


人の動きが一瞬止まる。


しかしすぐに再開される。


誰も気づいていない。


平だけが見ている。



---


影が現れる。


白い着物。


鈴音ではない。


だが似ている。


顔のない影。



---


影はゆっくり歩く。


そしてビルの壁に“触れる”。


その瞬間。


壁に鐘の模様が浮かぶ。



---


平は理解する。


「ここはもう……神社の外じゃない」



---


その夜。


テレビニュース。


「市内で原因不明の音響異常」


「複数地点で共鳴現象」


アナウンサーの声が一瞬だけ途切れる。



---


ゴォォォン……


画面が暗転する。



---


平はリモコンを握ったまま動けない。


部屋の隅に影がある。


円形。


ゆっくりと“部屋に馴染んでいく”。



---


声がする。


木村の声ではない。


鈴音の声でもない。


鐘そのもの。



---


「ここからが、本当の始まり」



---


平の足元に黒い線が走る。


円を描き始める。



---


第二章・第十九話


「都市の鐘」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。