↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第二章「消えた巫女」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/58

第十七話「外に残された者」

鐘の音が止んだあと、世界は不自然なほど静かだった。


風が吹いているはずなのに、音がない。


虫の声もない。


心臓の鼓動だけが、やけに大きく響く。


平はその場に立ち尽くしていた。


木村は消えた。


鐘の中へ。


鈴音も、同じように薄れていった。


まるで最初から存在していなかったかのように。



---


平は数歩後退し、膝をついた。


「……ふざけるな」


声は山に吸い込まれる。


返事はない。


ただ、神社の方向からかすかに“重い振動”だけが残っていた。



---


翌朝。


平は一人で山を下りた。


誰にも連絡できない。


電話は圏外ではなく、“繋がらない”。


どの番号も呼び出し音の途中で消える。


まるで世界から切り離されたようだった。



---


町に戻ると、いつも通りの日常があった。


通勤する人間。


コンビニの明かり。


笑う声。


しかし平には違和感があった。


「音が……薄い」


車のエンジン音も、足音も、どこか遠い。



---


その夜。


平は自宅でテレビをつけた。


ニュースが流れる。


「山中での事故、調査続く」


画面には見覚えのある山が映っている。


だが、神社の話は一切出ていない。


まるで最初から存在しないかのように。



---


ゴォォン……


その時だった。


テレビの音声が一瞬だけ歪む。


アナウンサーの声が途切れ、代わりに鐘の音が混ざる。


平はリモコンを落とした。


「まだ……続いてるのか」



---


部屋の明かりが揺れる。


壁に影が浮かぶ。


円形。


まるで鐘の内側。


平は後退する。


「やめろ……俺は関係ない」



---


影の中心から、声が聞こえる。


鈴音でもない。


木村でもない。


無数の声。


坂本。


松原。


森村。


木下。


石井。


植田。


そして――木村。



---


「お前は外にいる」


「だから見える」


「だから聞こえる」



---


平は叫ぶ。


「何なんだよこれは!!」



---


ゴォォォォン!!!


鐘の音が部屋を満たす。


しかし音は外からではない。


平の中から鳴っている。



---


その瞬間、理解が落ちてくる。


木村は消えたのではない。


鈴音は解放されたのではない。


ただ役割が移っただけ。



---


“鐘の内側”と“外側”は分断されていない。



---


平は息を止める。


自分の手を見る。


指先がわずかに黒く変色している。



---


窓の外。


遠くの山。


そこにはもう神社は見えない。


だが確かに聞こえる。



---


ゴォォン……



---


鐘は、まだ終わっていない。


むしろ今――


外へ出た。



---


第二章・第十八話


「鐘が外にある日」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。