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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第二章「消えた巫女」

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第十一話「残された鐘」

坂本。


松原。


森村。


木下。


石井。


植田。


六人が、不可解な圧死を遂げた。


警察は事故として処理した。


「建物の倒壊による圧迫」 「転落事故」 「原因不明の外傷」


現場は違っても、死因だけは共通していた。


全身を巨大な何かに押し潰されたような圧死。


平は、その説明を誰よりも信じられなかった。


なぜなら、仲間たちは皆、死の直前に同じことを口にしていたからだ。


> 「鐘が来る。」





---


事件から二週間。


ニュースは静かになり、世間は事故として忘れ始めていた。


しかし、平だけは眠れない日々を送っていた。


毎晩午前二時十三分。


耳の奥で鐘の音が鳴る。


ゴォーン……。


以前より小さい。


だが、確かに聞こえる。


「まだ終わっていない……。」


平はそう確信していた。



---


一方、木村もまた眠れずにいた。


自宅の机には、山の神社について集めた資料が山積みになっている。


新聞記事。


郷土史。


古文書の写し。


どれにも共通する言葉があった。


『鐘守神社』


しかし、地図にはその名前がない。


現在は別の名前に変えられていた。


木村は古い航空写真を見つめる。


百年前の写真。


神社の隣には、小さな集落が写っていた。


今では跡形もない。


「この村で何があったんだ……。」


その時だった。


スマートフォンが震えた。


画面には知らない番号。


木村はしばらく迷った末、電話に出た。


「……もしもし。」


返事はない。


代わりに聞こえたのは、小さな鈴のような音だった。


チリン……。


鐘ではない。


初めて聞く音だった。


そして女の声が響く。


「……来て。」


通話は切れた。



---


翌日。


木村は平を訪ねた。


「もう一度、神社へ行こう。」


平は驚かなかった。


まるで同じことを考えていたように、小さくうなずく。


「俺も昨夜、夢を見た。」


「夢?」


「白い着物の女が、本殿の裏へ来いって言うんだ。」


木村は息をのむ。


「俺もだ。」


二人は顔を見合わせた。


夢ではない。


誰かが二人を呼んでいる。



---


その日の夕方。


二人は再び山へ向かった。


神社への道は草木に覆われ、以前より荒れて見える。


鳥居をくぐった瞬間、冷たい風が吹いた。


境内には誰もいない。


あの巨大な鐘も静かに佇んでいる。


だが、前回来た時と違うものがあった。


鐘の足元に、一輪の白い花が供えられていた。


枯れていない。


誰かが最近置いたものだった。


「他にもここへ来た人がいる……。」


平がつぶやく。


その瞬間。


本殿の裏から、白い着物の裾がひらりと揺れた。


木村は懐中電灯を向ける。


誰もいない。


しかし風もないのに、白い花だけがゆっくりと揺れていた。


そして、どこからともなく女性の声が聞こえる。


> 「……まだ、間に合う。」




二人は顔を見合わせる。


この神社には、まだ何かがいる。


それは六人を殺した存在とは違う。


二人をここへ導こうとしている存在だった。


第二章 第十二話「白い花の導き」へ続く。

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