第十一話「残された鐘」
坂本。
松原。
森村。
木下。
石井。
植田。
六人が、不可解な圧死を遂げた。
警察は事故として処理した。
「建物の倒壊による圧迫」 「転落事故」 「原因不明の外傷」
現場は違っても、死因だけは共通していた。
全身を巨大な何かに押し潰されたような圧死。
平は、その説明を誰よりも信じられなかった。
なぜなら、仲間たちは皆、死の直前に同じことを口にしていたからだ。
> 「鐘が来る。」
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事件から二週間。
ニュースは静かになり、世間は事故として忘れ始めていた。
しかし、平だけは眠れない日々を送っていた。
毎晩午前二時十三分。
耳の奥で鐘の音が鳴る。
ゴォーン……。
以前より小さい。
だが、確かに聞こえる。
「まだ終わっていない……。」
平はそう確信していた。
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一方、木村もまた眠れずにいた。
自宅の机には、山の神社について集めた資料が山積みになっている。
新聞記事。
郷土史。
古文書の写し。
どれにも共通する言葉があった。
『鐘守神社』
しかし、地図にはその名前がない。
現在は別の名前に変えられていた。
木村は古い航空写真を見つめる。
百年前の写真。
神社の隣には、小さな集落が写っていた。
今では跡形もない。
「この村で何があったんだ……。」
その時だった。
スマートフォンが震えた。
画面には知らない番号。
木村はしばらく迷った末、電話に出た。
「……もしもし。」
返事はない。
代わりに聞こえたのは、小さな鈴のような音だった。
チリン……。
鐘ではない。
初めて聞く音だった。
そして女の声が響く。
「……来て。」
通話は切れた。
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翌日。
木村は平を訪ねた。
「もう一度、神社へ行こう。」
平は驚かなかった。
まるで同じことを考えていたように、小さくうなずく。
「俺も昨夜、夢を見た。」
「夢?」
「白い着物の女が、本殿の裏へ来いって言うんだ。」
木村は息をのむ。
「俺もだ。」
二人は顔を見合わせた。
夢ではない。
誰かが二人を呼んでいる。
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その日の夕方。
二人は再び山へ向かった。
神社への道は草木に覆われ、以前より荒れて見える。
鳥居をくぐった瞬間、冷たい風が吹いた。
境内には誰もいない。
あの巨大な鐘も静かに佇んでいる。
だが、前回来た時と違うものがあった。
鐘の足元に、一輪の白い花が供えられていた。
枯れていない。
誰かが最近置いたものだった。
「他にもここへ来た人がいる……。」
平がつぶやく。
その瞬間。
本殿の裏から、白い着物の裾がひらりと揺れた。
木村は懐中電灯を向ける。
誰もいない。
しかし風もないのに、白い花だけがゆっくりと揺れていた。
そして、どこからともなく女性の声が聞こえる。
> 「……まだ、間に合う。」
二人は顔を見合わせる。
この神社には、まだ何かがいる。
それは六人を殺した存在とは違う。
二人をここへ導こうとしている存在だった。
第二章 第十二話「白い花の導き」へ続く。




