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ヒロインはもう死んでいる!?~聖女ワトソンとオッサン探偵ホームズの事件簿~  作者: おさんぽミルク
メインヒロインはもう死んでいる!?

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第8話 ヒロインが死ななかった翌朝の物語

 瞬間移動の殺し屋、バレルを返り討ちにした翌朝。


 目が覚めると自室に見知らぬ可愛い女の子が居た。


 これだけ聞けば常人なら『はっは~ん? さては俺の部屋のクローゼットあたりが異世界へと繋がったか? きっと彼女は亡国の姫君で追手から逃げている最中に偶然俺の部屋へと出口が繋がったのだろう。きっと俺は巻き込まれるような形でそのお姫様を守りつつ、悪の組織を愛と勇気の力で蹴散らしていくに違いない!』とバカ・フルアクセルな事を考えるだろうが俺、写楽ホームズは違う。


 きっと彼女は俺が大切にしていたエロ本が愛の力で人型になった存在に違いない! 


 おおらく恩返しのためにこれから俺にドエロいおもてなしをしてくれるに――とそこまで考えて類まれなる知能を持った俺は気づいてしまった。


 ……あれ? この子、昨日助けた所長の姪っ子ちゃんじゃない?




「あっ、よかった! ちょうど叔父様に頼まれて起こそうとしていた所なんです」




 そう言って別嬪ちゃんは見る者すべて癒すような柔らかい笑みを浮かべた。


 その笑みは整った美貌と相まって、見る者の心と意識を吸い込んで離さない魔性の魅力を放っており……俺があと10年若ければ間違いなく恋に落ちていたところだ。


 なんて益体のないことを考えていると、別嬪ちゃんは何かに気がついたように『ハッ!?』とした顔を浮かべた。




「ごめんなさい、私ったら……まずは挨拶が先ですよね? おはようございます、写楽ホームズさん」

「あい、おはにょう……。ふぁぁぁ~~……」




 盛大に欠伸を放ちながらムクリッ! と身体を起こす。


 俺はそのままボケーッとした表情を作りつつ無害で冴えないイケメンを演出しながら、ボリボリと頭を掻いた。




「え~と、確かお嬢さんの名前は……」

「ワトソンです。ワトソン・サンライズ・メル・エル・ロードです。昨日から叔父様……レイトン・サンライズ・メル・エル・ロード様が経営しているこのタンテイジムショ? でお世話になっております」




 美しい所作でペコリと俺に向かって頭を下げる別嬪ちゃん。


 本当に1つ1つの動作が洗練されていて目を惹いてしまう。


 愛らしい容姿と相まってか、まるで1つの芸術品を見ているかのような気分にさせられる。


 こりゃ年頃の男女なら性別関係なく人気が出そうだ。


 きっと王子に婚約破棄された直後には、もうたくさんの求婚の申し出があったことだろう。……いや、流石にソレはないか。


 なんせそんな事をしたら王族に目をつけられてしまうからな。


 というか王子、この別嬪ちゃんの何が気に喰わなかったんだろう? オッパイか? 王子は貧乳派か?




「叔父様から聞きました、あの赤い髪の女の人から私を助けてくれたのが写楽さんだということを。本当に命を救ってくださり感謝の言葉もありません。ありがとうございます」

「んぁ~? あぁ~……気にすんな。人間として当たり前のことをしたまでさ」

「うわっ!? 先輩がなんか善人みたいなことを言ってる!? 気持ち(わる)っ!?」




 部屋の入口からメスガキ臭い声が俺の寝起きの耳朶を叩いた。


 このナチュラルに人の神経を逆なでする声は、間違いない。




「クリスティーナさん」

「お前も来ていたのかAカップ?」




 自室の扉の方へ視線を向けると、そこには中指を勃起させて俺を睨みつける後輩ダークエルフが居た。




「そもそもワトソンさんを救出したのはウチなんですけど?」

「もちろんクリスティーナさんにも感謝しております」

「というかお前、なんで朝から我が家に居るの? 嫌がらせ?」




 瞬間、クリスティーナが『あんたバカァ?』とどこかの弐号機パイロットのような瞳で俺を一瞥してきた。




「ハァァ~~? 朝からこんなプリティーで可愛い美女ダークエルフが甲斐甲斐しくオッサンを起こしにきてあげたんですよ? どちらかと言えばご褒美の部類に入ると思うんですけど? 先輩の目は節穴ですかぁ~? あぁ節穴でしたね、ぷぷっ(嘲笑)」

「うわっ、なんか天井のシミが増えてる気がする。別嬪ちゃんもそう思わない?」

「す、すみません……。今日初めて写楽さんのお部屋に入ったので、ちょっと分からないです……」

「あっ、ちょっと無視は止めてください……。ウチ、人にはあーだこうだ言いますけど、いざ自分が冷たくされるとメチャクチャ凹むダークエルフなんで……」




 半泣きで「無視しないで……」と弱々しい声をあげる後輩ダークエルフ。


 相変わらず撃たれ弱いヨワヨワかまってちゃんである。


 別嬪ちゃんが「ご、ごめんなさい!? 無視したつもりはなかったんです!」と慌てて半泣きのクリスティーナに声をかける傍ら、俺は気がつく。




「あれ? クリスティーナお前、今日は私服じゃないんだな? スーツなんて珍しいじゃねぇの」

「ッ! ふふふ……ソレに気づいてしまいましたか、先輩?」




 キランッ! とクリスティーナは瞳を輝かせると、今日一番のハイテンションでビシッ! と敬礼しながらどこか誇らしげな表情で口をひらいた。




「本日付けで警察庁刑事部捜査一課に配属されました、阿笠クリスティーナです!」

「ケイサツチョウケイジブソウサイッカ? えっと……クリスティーナさん、それは普通のケイサツカンさんとは何が違うのでしょうか?」

「えっ!? ワトソンさん、捜査一課を知らないんですか!? 花の捜査一課ですよ!?」




 クリスティーナが驚いたように目を丸くしながら別嬪ちゃんを見つめる。


 別嬪ちゃんは『恐縮です……』と己の無知を恥じるかのように、しゅんっと肩を落とした。




「あぁ、そういえば別嬪ちゃんは他所から来たばかりだから警察組織のことはあんまり知らねぇのか」

「は、はい……お恥ずかしながら、バハムス帝国にはそのような組織はありませんから。え~と、一応叔父様からは国を守る騎士団のようなモノだという事は聞いているのですが……」

「えぇっ!? バハムス帝国には警察って居ないんですか!?」




 ソッチの方に驚きなのですが……と全力で無知を晒す新米ダークエルフ刑事。


 お前……刑事になったんならソレくらい知っておけよ?




「別嬪ちゃんの認識でほぼ間違ってないぞ。警察はこの第六民主国を守る盾であり矛。騎士団には第一騎士団とか第二騎士団とかあるだろ? この貧乳ダークエルフが言っているのはその所属だ。――って、痛ぁ!? 先輩の頭を叩くな、Aカップ!」

「だ、誰がAカップですか!? 寄せてあげればBくらいありますよ!」




 クリスティーナはべしベシと俺の頭を何度も叩きながら、困惑している別嬪ちゃんに向かってさらに言葉を重ねていく。




「ワトソンさん、ウチが所属する警察庁には(おおむ)ね3つの部署が存在します。それは【刑事部】【公安部】【生活安全部】の3つです」

「つ、つまりクリスティーナさんはその中の【刑事部】に所属しているというワケですね?」

「ただの刑事部ではありませんよ! 犯罪の種類によって担当する課が違い、二課は強盗、三課は凶悪犯罪、四課は詐欺・窃盗盗難などに分かれているんです! その中でもウチが所属するのは警察庁の花と言われている殺人を担当する花の一課ッ! エリートが集まるエリートのためのエリートな部署なのです!」

「エリートエリートうるせぇ」

「え~と……」




 鼻息を荒げて自慢するクリスティーナにどう対応したらいいのか分からないようで、別嬪ちゃんが困ったような笑みを浮かべていた。


 クリスティーナも自分の世界にどっぷりと浸っていて気づいていないようだし、仕方がない。ここは助け船を出しておこう。


 お助け料300万円な? とどこかのブリブリなざえもんのような事を心の中で呟きながら、俺はクリスティーナを(いさ)める声をあげた。




「そんな急に色々言われても別嬪ちゃんには分からねぇよ。まずは警察云々(うんぬん)よりこの国に慣れて貰う方が先だろうが」

「――ハッ!? す、すみません……冷静沈着が売りのウチとしたことが、つい熱くなって。ごめんなさいワトソンさん……」

「い、いえっ! 面白い話しではありましたし、謝る必要はありませんよ?」




 正気に戻ったクリスティーナがペコリと別嬪ちゃんに頭を下げる。


 相変わらずこの後輩ダークエルフは思い込んだら一直線のイノシシ女である。




「ところで話しは戻るけど、なんでクリスティーナが事務所に居るワケ? お前、刑事になったんだよな? もしかしてもうクビになったのか? 出戻り?」

「クビになっていません! 失礼なことを言わないでください!」

「あっ、そうだ! 写楽さん、今ジムショの方に警察庁から霧生ケイシさんがおいでになっておられます。なんでも写楽さんに先日の事件の詳細について詳しく聞きたいとのことで……」

「あぁ、なるほど。だからクリスティーナも居るわけね」

「ですですっ! 一応自分も新米とはいえ今回の事件に関わった1人ですからね! 事件の詳細を知る権利があります!」




 そう言って薄い胸をフンッ! と逸らすクリスティーナ。


 う~ん? 寄せてあげてもBは無いんじゃないかぁ、やっぱり。


 そんな残酷な真実に気づきつつ、俺はベッドから起き上がり、いそいそと寝間着を脱ぎ始めた。




「あ、あの写楽さん? 実は私、写楽さんに聞いてみたいことがあったんです」

「俺に聞きたいこと?」

「はい。どうしてあの日、私があの赤髪の女性に襲われるって分かったんですか?」

「あっ!? それはウチも知りたいぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ!?」




 突然聖水を浴びた悪魔のような悲鳴をあげだすクリスティーナ。




「うるせぇ……近所迷惑だろうが?」

「なんで突然裸になるんですか先輩!?」

「上半身だけだろうが、ピーピー(わめ)くな」

「ちょっ、裸のままコッチ見ないで!? 何か羽織ってください、今すぐっ!」

「俺の部屋で俺がどのような格好で過ごすかは俺の自由だ。なんならマジで今ここで全裸になってやろうか?」

「やめてください! 本当にやめてください! ワトソンさんも居るんですよ!?」




 うら若き乙女に先輩の汚い裸体を見せないでください! と声を荒げるクリスティーナ。


 汚いとは失礼なヤツだな? これでもちゃんと風呂に入ってピカピカに身体を磨いているんだぞ?




「く、クリスティーナさん、落ち着いてください。私は大丈夫ですから。男性の裸なら見慣れていますので」

「でもワトソンさんもこんなオッサンの汚い裸体なんか見たく――見慣れている!? だ、男性の裸体を!? マジですか!?」

「??? はい。我が家は王国騎士団員の剣術指南役を受け持っておりますので、幼少期から男性の上半身の裸程度であれば見慣れております」

「あ、あぁっ! 見慣れているってそういう……ビックリしたぁ。てっきりワトソンさん、ウチよりも年下なのにもうバンバンヤリまくっているのかと……」

「ヤリまくる?」

「い、いえっ! なんでもありませんです、はいっ!」




 ブンブンブンブンッ! と残像が見えるほど首を高速で横に振るクリスティーナ。


 あぁ、なるほど、そういう事か。




「なんだクリスティーナ、お前まだ処女なのか?」

「しょっ!?」




 ボッ!? とクリスティーナの褐色の肌が目に見えて赤くなる。


 長い耳が動揺したようにピコピコ揺れる。


 流石に処女発言は恥ずかしかったのか、別嬪ちゃんも俺から目を逸らしてほんのり頬を赤らめていた。


 恥ずかしがり方1つとっても気品がある。


 このメリケン後輩ダークエルフとは段違いだ。




「バッ!? なっ!? しゃっ!? ちょっ!?」

「悪かった、悪かった。そんな動揺させるつもりはなかったんだ、許せ。なんなら謝罪がてらにその処女貰ってやろうか?」




 ビンタされたよ☆

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