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ヒロインはもう死んでいる!?~聖女ワトソンとオッサン探偵ホームズの事件簿~  作者: おさんぽミルク
メインヒロインはもう死んでいる!?

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第3話 ヒロインはもう死んでいる!?

 レイトン所長の姪っ子を出国ゲートまで迎えに行くこと1時間50分。


 時刻午前8時50分。


 もうすでに約束の時間から20分は遅れていた。




「チッ……遅ぇなぁ別嬪ちゃん? もうかれこれ20分は待ってるぞ?」




 7号が擬態したコートのポケットに両手を突っ込みながら、かじかむ寒さを誤魔化すようにその場で軽く足踏みをする。


 この第六民主国には朝も昼もない。ずっと夜が続いている。


 そのため気温はずっと10月から12月の間をキープし続けているのだが……今日はやたら寒く感じてならない。寝不足だからだろうか?




「ふむ……このキ●タマの縮み具合から察するに、どうやら今日は相当冷え込むらしいな」




 寒い、寒いと肩を(すく)めながら左手の腕時計を確認する。


 コッチが5分前に到着してやったというのに、重役出勤とは可愛い顔していい度胸していやがる。


 これは乳の1つでも揉んでやらなきゃ割に合わんな。


 そんな事を考えながら、俺はコートのポケットから別嬪ちゃんの写真を取り出した。




「D……いやEはあるか?」




 やはり貴族の娘ちゃんという事もあり、良いモノを喰っているのだろう。


 中々にご立派なモノをお持ちでいらっしゃる。


 写真からでもハッキリと分かるほどの存在感……ほんとコレの半分でもいいからクリスティーナに分けてやりたいぜ。




「この子、確か17歳だったっけ? 1つ上の我が後輩ダークエルフは母親の腹の中に女性ホルモンを忘れて来たというのに、この1つ下の所長の姪っ子は世界を相手に出来るほどのワガママボディーを有しているだなんて……神様も残酷なことをしやがる。いや一応所長もある意味ワガママボディーだし、これは一族の遺伝なのか?」

「急げっ! このすぐ路地裏だ!」

「クッソ!? 今日は遅番だったのに、なんでこんな日に限って!?」

「うん?」




 俺が別嬪ちゃんのマシュマロボディーに想いを()せていると、出国ゲートの警備に当たっていた警察官たちがザワザワしながら路地裏へと駆けていく姿が目に入る。


 なんだ、なんだ? 


 妙に騒がしいようだが、何かあったか?




「また全裸で徘徊しているピクシーの爺さんでも居たか?」




 もしくはエルフの着替えを覗こうとしているオッサンピクシーか。


 まぁどっちにしろロクなモンじゃないだろうな。




「どれ、暇だしちょっと覗きに行ってみるか」




 俺は冷やかしがてら警官の後を追いかけるように路地裏へと足を踏み入れて行く。


 この第六民主国の首都の4割は路地裏で出来ている。


 ここに住んでいる種族でこの広大な路地裏の全てを網羅しているヤツは、多くて5人、少なくて3人くらいだろう。


 特にビルとビルの間の路地は、監視社会の現代においても監視の目が届かない犯罪の温床となっている。


 この現状を警察はどうすることも出来ていない。


 理由は単純、危険だから。


 この多種族が共存する第六民主国にはその性質上、国を追われて流れ着いた犯罪者が多く影に隠れて潜んでいる。


 そいつらは基本的に地下か路地裏で生活することが多い。


 しかも厄介なことにそういう奴らに限って腕が超絶立つ。


 もちろん警察にも腕の立つ人材はいるが、ぶつかったらまず間違いなくどちらも無事では済まない。


 だから警察も余程のことがない限りは路地裏へは近づかない。




「まっ、もう警察を辞めた俺にはどっちにしろ関係ないけど」




 俺は水を得た魚のように慣れ親しんだ路地裏をスイスイと歩いていく。


 自慢じゃないがこの国の中心部の路地裏はほぼ全て把握している。


 どこをどう歩けばどのように繋がっているか、全部頭に、身体に沁み込んでいる。


 俺にとって路地裏は腐れ縁の友人のようなモノだ。




「確かこの通りはオカマの親父が経営しているケバブ屋に繋がる通りだったな。臨時収入も入ったし、ちょっと豪華な朝食でもしようか――うん?」




 頭の中で出来立てのケバブに喰らいつく自分を想像しようとして、気がつく。


 ……異臭がする。


 血と鉄が混ざったような臭い。


 ガキの頃から何度も()いできた臭い。


 死の臭い。




「……勘弁してくれや」




 物凄く嫌な予感がする。


 こういう時の俺の直感は外れたことがない。


 だが、今日ばかりは外れてくれと心の底から願った。




「コッチは徹夜明けなんだぞ? もうトラブルは勘弁だわ」




 そう文句を垂れながらも、俺は警官の賑やかな声のする方へと歩みを進めていく。


 路地裏を歩くこと数十秒、視界が少しだけ開ける。


 そこには――血まみれの1人の少女を取り囲むように、数人の警察官が声を荒げていた。




「ダメだ、もう息をしていない……可哀想に」

「急いで一課の霧生警視に報告しろっ! 殺人だっ!」

「む、惨い……おぇぇ~っ!?」




 バカ、こんな所で吐くなっ!? と新人警官だと思われる男の頭をゴツンッ! と殴る野郎の警官。


 俺はそんな警官たちの間を縫うように、視線を血まみれでコンクリートの上に横たわる少女へと送った。


 白のブラウスに青みかかった膝丈のスカート、茶色がかったレースアップショートブーツといかにもいいところのお嬢様といった出で立ち。


 本来であれば俺とは縁もゆかりもない高嶺の花……のハズなのだが、どういうワケかそうも言っていられなくなった。




「マジかよ……」




 思わず片手で頭を押さえながら天を仰ぐ。


 俺はカノジョを知っている。


 カノジョの名前はワトソン・サンライズ・メル・エル・ロード、我が【レイトン探偵事務所】の所長であるレイトン・サンライズ・メル・エル・ロードの姪っ子にして、俺が迎えに来た女の子。


 その子が血まみれで死んでいた。




「嘘だと言ってよバーニィ……」




 こうして俺、写楽ホームズとワトソン・サンライズ・メル・エル・ロードの初対面はカノジョの死体からスタートした。

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