第2話 オッサン探偵の日常
窃盗エルフを取り逃がしてから1時間後のとある雑居ビルの2階にて。
俺とクリスティーナは【レイトン探偵事務所】と書かれた扉の前で、最後の作戦会議を開いていた。
「ほ、本当に頼りにしていいんですよね先輩?」
「当たり前だ。ドーンッ! と泥船に乗ったつもりで構えていろ」
「誰か沈む以外の選択肢をウチにください……」
何故か『心の底から不安だ……』とでも言いたげな顔を浮かべるクリスティーナ。
心なしかダークエルフ特有の長い耳もしんなり下を向いている気がしてならない。
もしかしなくても、俺の勇ましい姿に惚れてしまったのかもしれない。
まったく、種族問わず異性を魅了してしまう自分の才能が怖いぜ。
「よし、俺が合図をしたらドアを開けろ。それだけでいい、あとは俺の勇姿を見守っておけ」
「は、はいっ!」
クリスティーナはやや緊張した面持ちで事務所のドアノブを握る。
そのまま俺の合図を逃さないように真っ直ぐコチラを見つめながら、いつでもドアが開けるようにスタンバイを完了させた。
俺は1度だけ大きく吐息を吐き出すと、頭のスイッチを切り替えるように深く息を吸い込んだ。
……よし、行くぞっ!
開けろっ! と目線で合図を出す。
瞬間、間髪入れず事務所のドアが開き、中から小太りのオッサン、もといレイトン所長が俺の視界に現れる。
「おかえり、2人とも。遅かったね? あっ、そうだ聞いたよ? 今朝の依頼は――」
「ただいま戻りました、所長ッ!」
「うわっ、ビックリしたぁ!? どうしたの写楽くん? そんな大きな声を出して?」
俺は大きな声と勢いで先手を取りつつ、両手をコネコネと擦り合わせながら満面の笑みで扉をくくる。
そのままペコペコ頭を下げながら高速でレイトン所長へと詰め寄っていく。
「すみません、朝から尊敬する所長に会えると思ったら、つい声が大きくなってしまいました! でもまぁいいですよね! 元気なことはいいことですので!」
「ま、まぁ確かに元気なことは良い事だけど、今日は随分と元気過ぎるような気が? それにキミの口からそんな言葉が出るなんて……一体どういう風の吹き回しなんだい?」
俺のエンジェル☆スマイルに気圧された所長が不気味そうに身体をビクビクさせる。
よし、このままノリと勢いだけで押し切ってみせ――
「気をつけてください、レイトン先生。この男が下手に出ているときは何かを誤魔化そうとしているか、都合の悪いことを有耶無耶にしようとしているかのどちらかですので」
――みせようとしたその瞬間、ソファーの方から男の声が事務所へと静かに響いた。
この不愉快極まりない声は……間違いない。
俺は張り付けていたスマイルを消し去ると、ソファーで優雅にコーヒーを飲んでいたスーツ姿の野郎に視線を寄越した。
「大方、今朝のスリの犯人を取り逃がした失態を誤魔化そうとしているのでしょう。まったく、相変わらず小ズルいマネをする男だ」
「うげっ!? なんでイクオがココに居るんだよ?」
思わず俺のやいぇ戦端正な顔がブサイクに歪む。
ソファーに座っていたのは俺の元同期にして現警察庁捜査一課長の霧生イクオ警部であった。
「朝から嫌な顔を見たぜ……」
「そんな事を言っていいのかホームズ? せっかくお前の失態を尻拭いしてやったというのに?」
「失態を尻拭いだと?」
どういう意味だ? と俺がイクオに尋ねるよりも早く、レイトン所長が「そうそうっ!」と割り込んできた。
「今朝、写楽くんたちスリの犯人を取り逃がしちゃったでしょ? その取り逃がした犯人を捜査一課が捕まえてくれたらしいんだよ」
「捜査一課がぁ~? これまた随分と小さな獲物を狙ったもんだな 花の捜査一課さまがよぉ? お前らの担当じゃねぇだろ、コレ?」
「フンッ、腕が落ちたなホームズ。お前は知らないようだが、今朝のあのエルフはシンジケートと繋がっている可能性がある」
つまり狙ったのはあくまでその上の連中ってことか。
コイツが動いているってことは、かなり大がかりな組織の可能性が高いな――って、何を分析しようとしているんだ、俺は?
俺はもう捜査一課の刑事じゃない普通の探偵だ。
血生臭い件には関わらないって決めただろうが。
「その事を伝えにここまで来たのか? なら用事はもう済んだな、帰れ帰れっ! 朝方テメェの顔なんか見たくねぇんだよ、コッチは」
「それはお互い様だ。誰が好き好んで朝からキサマの不愉快極まりない顔を見たいと思う? 罰ゲームか?」
「あぁんっ、なんだとテメェ!?」
「相変わらず仲が良いね、2人とも。流石は元相棒なだけあるよね」
レイトン所長が笑顔でそんな能天気なことを口にする。
瞬間、思わずイクオと顔を見合わせ……お互い心の底から嫌そうに顔を歪めた。
「勘弁してくださいよ所長? どこをどう見たらこんな堅物クソ真面目と仲良しに見えるんすか? 頭カチ割りますよ?」
「先生にしては面白くない冗談ですね? ただの腐れ縁なだけです」
「えぇ~、そうかなぁ? 僕は仲が良いと思うけどなぁ?」
一体どこをどう見てそう判断したのか、レイトン所長は相変わらずワケの分からん戯言を口にしていく。
まったく、所長の目は節穴ですか?
あまりにもふざけた事ばかり口にしていると、その口をイクオの唇で強制的に塞ぎますよ?
「朝から所長の戯言にもイクオの妄言にも付き合ってられんわ。ほら、早く帰れ警部殿っ! 事件がお前を待っているぞ?」
「残念だったなホームズ。もう警部じゃない」
「あっ?」
イクオはどこか自慢気に口角をフッ! と緩める。
もう警部じゃない?
それってどういう――ハッ!?
「さてはお前っ!? また昇進したのか!?」
「凄いよね霧生くん、まだ写楽くんと同じ27歳なのにもう警視だよ。このペースでいったら、あっという間に僕の居た階級を追い越しちゃうね」
「いえ、警察界の麒麟児と言われた先生に比べたら自分はまだまだです。もちろんいつかは先生と同じ警視監になるつもりですがね」
レイトン所長に褒められたのが嬉しかったのか、珍しく屈託のない笑みを浮かべるイクオ。
チッ、面白くねぇなぁ!
「ケッ! 昇進がなんだ? 俺がまだ刑事を続けていたら余裕でお前と同じ警視になっていたってぇの!」
「嘘つくな、万年巡査」
「うん、嘘はよくないよ写楽くん。刑事時代の写楽くんは問題行動が多すぎて出世なんて出来なかったじゃないか」
「えっ!? レイトン所長が元警察官なのは知っていましたけど、写楽先輩も元刑事だったんですか!? ホントにっ!?」
今まで静かに俺の後ろで静観していたクリスティーナが驚いたように大きな声をあげた。
ヤッベ、気が緩んだ!?
うっかり元刑事であることを口にしちまった!?
コイツに刑事であることを知られるのはマズイというのに……。
所長もあからさまに『なにやってんの!?』とばかりに俺を見つめてくる。すいません……。
そんな俺達を横目にイクオは不思議そうにクリスティーナを見つめながら、その不愉快極まりない唇を震わせた。
「なんだ、ここで働いているのに知らなかったのか阿笠クリスティーナ。不愉快なことに、この男は元捜査い――」
「そんな事よりも、用が終わったなら早よ帰れ。これから俺様は朝食なんだ、いつまでもテメェの顔を見ていると食欲が失せる」
俺はこれ以上余計なことを口にされる前に、さっさと話しを打ち切ろうと会話を誘導しようとする。
その瞬間、視界の隅で『邪魔すんなカス』とばかりにクリスティーナがジロリッ! と俺を睨んできた。
おい誰がカスだ、誰が?
コイツ、マジで先輩に対して礼儀がなってねぇなぁ。
初めて会ったときはあんなに初々しかったのに……時の流れというのは残酷である。
「それに関しては同感だ。コチラとしてもいつまでもお前の汚い面を見ていると気分が悪くなる。さっさと要件を済ませて退散させて貰うとしよう。――阿笠クリスティーナ」
「は、はいっ!」
「ここ2年間において度重なる殺人事件への協力、及び解決の一助を担ったとして特例ではあるが警察庁捜査一課の刑事見習いとして貴君をスカウトしにきた」
「えっ? ……えぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇ~~~~~~ッッ!?!?」
クリスティーナの素っ頓狂な雄叫びが事務所を揺らす。
おいおい、マジかよ?
「試験も受けず、警察学校にも通わず、いきなり捜査一課の一員として働くだと? 正気か、イクオ?」
「見習いとしてだがな。カノジョにはそれだけの能力があると上が判断した」
「上層部が? あの堅物共がそんな特例を認めたのか? ありえねぇ~……」
「ソレを可能にする人物をオレもお前も知っているだろうが」
そう言ってイクオはチラリとレイトン所長へ視線をよこした。
あぁ、なるほど。そういうことか。
確かに所長ならそんな無茶を通すことは可能だわな。なんせ俺とイクオが所属していた【若人特別捜査室】を作った張本人なんだから。
「でもいいのか? 試験くらいは受けた方がいいだろ?」
「問題ない。カノジョの能力についてはこの2年で嫌というほど間近で見てきた。……お前のせいでな」
「人のせいにすんな。文句があるならロクな依頼をとってこないウチの所長に言え」
「先生に文句など言えるワケがないだろうが、馬鹿者め」
俺から視線を切り、信者の目つきで我が【レイトン探偵事務所】の所長を見つめるイクオ。相変わらずの敬愛っぷりだわ、コイツ?
ほんと出会ってから変わらん男である。
俺が呆れて何も言えなくなっていると、静かに事の成り行きを見守っていたレイトン所長がクリスティーナに優しい笑みを浮かべていた。
「さて、阿笠くん? 特例ではあるが君の夢への道は開かれた。もちろんコレは強制じゃない、不安なら断ってもいい。どうするかは阿笠くん次第だよ?」
「しょ、所長……。でもあの……いきなり捜査一課だなんて……大丈夫でしょうか?」
「僕は問題ないと思うけどね。君の実力は本物さ、それはこの場に居る全員が保証するよ。ねっ、イクオくん?」
「そうですね。先生が指導しているおかげか現場での立ち回りも本職となんら変わらないですし、自分としても問題ないと考えます」
「き、霧生警視……」
「自信を持て貧乳。誰がお前に捜査のイロハを叩きこんだと思っていやがる?」
「カス……」
クリスティーナがゆっくりと俺達を一瞥する。
どうでもいいけど、なんか俺だけ罵倒されてなかった?
「……ありがとうございます、皆さん。阿笠クリスティーナ、その申し出よろこんでお受けいたしますっ!」
ビシッ! と所長とイクオの方を見つめながら敬礼するクリスティーナ。……気のせいか俺の方を一切見ようとしないのは、ツンデレだからだろうか?
「よし、決まりだな。では疲れているところ悪いが、さっそく付き合って貰おうか」
「へっ? 付き合うって……どこへでしょうか?」
「おいおいイクオ? まだ18のクソガキを口説くとは、お前も隅に置けんなぁ! よっ、歩く人型オークッ! キ●タマの擬人化ッ!」
「死ねっ」
「キッツ!?」
特に理由のない罵倒が俺を襲うッ!
「今のは写楽くんが悪いよぉ~」
「えぇ~っ? 所長までアイツの肩を持つんすか?」
「だって話しの流れからして『警察署まで付き合ってくれ』って分かるでしょ~? 多分契約の書類作成とかしに行くんじゃないかな?」
「流石は先生、その通りです」
イクオが俺には絶対に向けることのない無邪気な笑みをレイトン所長に向ける。
ハンッ! 俺だって気づいていたっての!
あぁ~、ヤダヤダッ! 冗談も通じない野郎っていうのはね、心に余裕がなくてイカンよ。
それじゃ昇進は出来んぞ、イクオ? ……まぁ昇進しているけど。
「あぁ、なるほど書類作成ですか。分かりました、刑事になれるのであれば何処へだってついて行きます!」
「よし、いい返事だ阿笠クリスティーナ。では行こう。それでは自分はこの辺りで失礼します、先生」
ソファーから立ち上がりレイトン所長にペコリッ! と一礼すると、イクオはツカツカと革靴を鳴らして俺の横を突っ切って事務所を後にした。
その後ろを慌てて追いかけようとするクリスティーナ。
そんなクリスティーナにレイトン所長が「阿笠くん」と声をかけた。
「頑張ってね? ここから先はもう力になってあげられないけど、僕も写楽くんも阿笠くんなら凄腕の刑事になれると信じているよ」
「まぁ気楽にやれやAカップ。もう戻ってくんなよ?」
「所長、クズ……はいっ! 阿笠クリスティーナ、頑張ってきます!」
行ってきます! と徹夜明けだというのに元気よく事務所を飛び出す後輩ダークエルフ。
やって来たときもそうだったが、去るときも嵐のような女だなアイツ?
まぁあれくらいのバイタリティーがないと一課ではやっていけないし、丁度いいか。
俺と所長は急に静かになった事務所の雰囲気を嫌うように、率先して口を開いた。
「阿笠くんもいよいよ刑事かぁ……寂しくなるねぇ」
「ねぇ所長? アイツの俺への罵倒、エスカレートしていませんでした?」
「コンプレックスを弄るからだよぉ~。ところで今朝のスリの件なんだけどね、なんで見逃したの? 原因は一体――」
「クリスティーナです」
瞬間、俺は間髪入れず口をひらいた。
「クリスティーナの奴が逃しました」
「そうなのかい?」
「はい、今からキチンとした経緯を説明します」
俺は100対0でクリスティーナが悪かったと説明した。
「もちろん俺はその場で叱りつけました。こんな事じゃ夢だった刑事にはなれんぞ、と」
「う~ん? まさか阿笠くんがそんな初歩的なミスをするだなんて……もうちょっと様子見をした方が良かったかなぁ?」
ちょっとだけ推薦を出したことを後悔し始める所長。
俺はそんな所長に満面の笑みを浮かべて口をひらいた。
「つまり悪いのは全部クリスティーナ、なので俺への今月のお給金はちゃんと満額で払ってくださいね?」
「う、うん。分かったよ……。こ、今後もよろしくね、写楽くん?」
「はいっ!」
もちろんです! と元気よく頷く。
相変わらず惚れ惚れするほどの完璧な立ち回りである。
これで俺の給料は守られた。
所長があとからクリスティーナに事件の詳細を聞こうとしたら危険だったが、運が良いことにクリスティーナは刑事になるべく警察庁へと向かった。
つまり、もう2度とこの事務所には顔を出さない。
よって真相は闇の中!
たった1つの真実を隠す、見た目はイケメン、中身もイケメン、その名も名探偵ホームズを今後ともよろしくっ!
「にしても珍しいね? 写楽くんが任務に失敗するだなんて。能力は使わなかったのかい?」
「今日はクリスティーナへの戒めのために使いませんでした」
本当はこのあとひと眠りしてから使おうと思っていたのだが、もう事件が解決した以上その必要もなくなった。
……イクオに手柄を持っていかれたのは癪ではあるが。
「そんなワケで今日はもう上がりますね? もう徹夜明けだから眠くて、眠くて」
「ちょっと待った写楽くん」
事務所の奥にある自分の部屋へと引っ込もうとした俺を所長が止める。
「なんすか所長? お布団が俺を待っているんですけど?」
「いやね? 任務に失敗したペナルティーを受けて貰おうかと思って」
「ペナルティー? ……ハッ!? 減給ですか!? だとした断固抗議を――ッ!?」
「あぁ、違う違う。写楽くんにはこれから『とある女性』を迎えに行って欲しいんだよ」
そう言ってレイトン所長は懐から1枚の写真を取り出して見せた。
そこには肩まで切りそろえた綺麗な黒髪に濡れた紅玉のような瞳をした、上品そうな1人の少女の姿が映っていた。
可愛いと綺麗が同居したその少女は、まるで羽化寸前の蛹のような、あと数年もしたら絶世の美女になるであろうことを予感させる顔つきだった。
「誰です、この別嬪ちゃんは?」
「僕の姪っ子だよ。名前はワトソン・サンライズ・メル・エル・ロード。とある事情で2週間ほど僕が面倒を見ることになったんだよ」
「へぇ~。所長の姪っ子にしては可愛い子ですね?」
「言っておくけど、手を出しちゃダメだからね? 僕の兄……つまりその子の父親はすっごい子煩悩で、キレたらナニをしでかすか分からないんだから」
頼むよ写楽くん? と珍しく釘を指してくるレイトン所長。
確かレイトン所長の兄貴って、この世界にある12の大国の内、人間が治める【バハムス帝国】の御三家と言われているロード家の当主様だったっけ?
つまりこの別嬪ちゃんはお嬢様、いやお姫様といった所か。
ふむ……なんかキナ臭いな?
本来ならそれだけ位の高い少女が国を離れるなどありえないのだが……なにかやらかしたか?
家督争いに負けたか、もしくは家督争いから逃げるために国を出たか……。
「写楽くん? 余計な詮索はしなくていいからね?」
「まだ何も言っていませんよ?」
「目が言っているんだよ。――っとぉ、こんな雑談をしている場合じゃないね。8時30分に外へと繋がるゲートの前で待ち合わせをしているから、急いで向かってあげてね?」
「8時30分って、あと1時間半しかないじゃないですか? 今から飛び出てもギリギリですよ?」
我が事務所から出国ゲートまで約1時間半ちょいかかる。
そりゃ急げば1時間で行けないこともないが、徹夜明けの身体にそれはちとキツイ。というか眠い。
なんで俺が見ず知らずの小娘のためにそこまでせにゃならんのだ?
「所長が行ってくださいよぉ~? 所長の姪っ子でしょ~?」
「う~ん? 元々は僕が自分で行くハズだったんだけどね? ちょっとどうしても外せない用事が緊急で入っちゃってね? 頼むよ写楽く~ん?」
「えぇ~っ?」
かったりぃ~。
1ミリも関係が進展しないラブコメ位かったりぃよ。
「ダメですよ所長? もういい大人なんだから約束くらい自分で守らないと?」
「そう言わないでぇ~? お願いだよぉ~?」
「無理ですね。残念ですけど、俺にそんな小娘を迎えに行く時間なんて――」
「もし迎えに行ってくれるのなら、お小遣いとして2万あげるからさぁ~?」
「そんな小娘を迎えに行く時間なんて――あまりに余って困っていた所ですよぉ~っ!」
俺は所長の気が変わらない内に、サッ! と別嬪ちゃんの写真を強奪する。
「この子を出国ゲートまで迎えに行けばいいんですよね? 了解ですッ!」
「ありがとう写楽くん、助かるよ!」
「いえいえっ! 敬愛するレイトン所長の頼みならこの写楽ホームズ、例え火の中水の中ッ! どこへだって駆けつける所存ですよ!」
尻ポケットから財布を取り出し2万円を差し出してくる所長に満面の笑みを浮かべながら、お小遣いをしっかりと受け取る。
へへへ……やったぜ!
お迎えが終わったら大人の遊園地に直行だな♪
今日は誰を指名しようかな? 吸血鬼のレナちゃんにしようかな?
ヤッベ、夢と股間が膨らむぜ!
「それじゃ別嬪ちゃんのお迎え、行ってきま~す♪」
「気をつけてねぇ~?」
俺は所長の加齢臭たっぷりの声音を背中に受けながら、上機嫌で事務所をあとにした。
……このあと始まる長い1日のことなど露とも知らず。




