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ヒロインはもう死んでいる!?~聖女ワトソンとオッサン探偵ホームズの事件簿~  作者: おさんぽミルク
メインヒロインはもう死んでいる!?

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第22話 夜を駆ける

 ウラギールを連れ去ったダークエルフの男を追いかけるべく、バイクに擬態した7号に乗ってワトさんと共に(ソラ)を駆けること5分。


 ブロードウェイの上空をヨタヨタと飛んで逃げるダークエルフの男たちを発見する。




「居たっ! 居ましたよホームズさん、ウラギール達ですっ!」

「よっしゃ! このまま突っ込むぞ、体当たりだ!」

「はいっ! ……えっ、体当たり?」




 ブルンッ! とエンジンを吹かせながら、さらに車体を加速させる。


 そのまま一筋の流星となったダークエルフの男たちに突っ込んでいき、




「えっ? えっ!? うそ、ウソウソウソウソウソッ!? ちょっと待ってホームズさん!? それは私たちも死んじゃうんじゃ嫌ぁぁぁぁあああああ~~~~~ッッ!?!?」

「??? ……ッ!? な、なんだぁ、アレは!?」

「チッ、気づかれたか」




 ワトさんが大きな声を出したせいで、後ろへ振り返ったダークエルフの男がギョッ!? と驚いた顔を浮かべる。


 そのまま急接近する俺達から逃げるように回避行動を取ろうとし……逃がさんっ!


 俺は避けられる前に車体をぶつけようとアクセルをさらに(しぼ)るが、


 ――チュンッ!




「うぐぅっ!?」

「クソッ、(かす)っただけか」




 間一髪のところで俺達の突撃を躱すダークエルフの男。


 だが体勢は崩れたようで、大幅に飛行スピードは落ちていた。




「追撃する。ワトさん、警棒であのダークエルフを叩き落とせ!」

「はいっ! ……はい!? えっ、本気ですかホームズさん!?」

「当たり前田のクラッカーだ!」




 俺は急旋回しながら再びダークエルフの男に最接近する。


 今度はすれ違う一瞬を警棒で仕留める!


 俺の後ろに座っていたワトさんも困惑していたが、すぐさま「えぇい、これもハロルド様のためです!」と覚悟を決めて警棒を構えた。


 いいぞ、女は度胸! 男は愛嬌! オカマは最強だ! ……どこから出てきたオカマ?




「くっ……空を飛ぶ能力者か!? 厄介だなっ!」




 男は器用に片手でウラギールを抱えながら、空いた片方の掌を俺達の方へと向ける。


 途端にダークエルフの男を守るように、空中に可視化された大気の剣が浮かび上がり――ヤッベ!?


 倉庫で放ったアレ(風の刃)がくる!?




「テルサリンクスッ!」




 瞬間、接近する俺達を迎え撃つように風の刃が放たれた。




「ホームズさんっ!」

「あいよ、任セロリッ!」




 俺はハンドル操作で迫りくる大気の剣を1本、2本と躱していく。


 まさか躱されるとは思っていなかったらしいダークエルフの男の顔が、驚きと怒りで歪む。




「羽虫の分際で空を戦場とする我々に歯向かうか!? おこがましいっ!」

「その羽虫に追い詰められている間抜けは一体どこのどいつだろうなぁ!?」

「~~~~~~ッッ!? 堕ちろ、蚊トンボッ!」




 テルサリンクスッ! とさらに風の刃を出現させるダークエルフの男。


 だが残念、判断が数秒遅かった。


 もうこの距離は俺達の距離だ!




「ワトさんっ!」

「はいっ!」




 ダークエルフの男が風の刃を放つよりも早く、野郎共の脇に接近していた俺達は駆け抜ける勢いを利用してダークエルフの男の顔面に警棒を叩きこんだ。




「【ロード流剣術】弐ノ型『疾風』ッ!」




 バチィィィンッ! と綺麗な横薙(よこな)ぎの一閃がダークエルフの男の顔面に吸い込まれるようにキマる。


 男は悲鳴すらあげることなく「~~~~~~~ッッ!?!?」と片手で両目を押さえながら夜の街へと落ちていく。


 それでもウラギールの野郎を離そうとしないのは敵ながら天晴と言っておこう。




「落ちるのはお前だったな、蚊トンボ」

「わ、私たちも居りましょうホームズさん!」




 ワトさんに急かされ、俺達も地上に向けて高度を下げていく。


 ダークエルフの男はウラギールと共に真っ逆さまに地面へと落ちていくが、ぶつかる直前に風魔法を唱えたのか、なんとか落下の衝撃を和らげ地面へと着陸する。


 だがそれでも完璧には落下の勢いを殺すことが出来なかったようで、手足があられもない方向に曲がりながら、ウラギールと共に血反吐を吐いてブロードウェイの道路のど真ん中へと転がった。


 突然降ってきたダークエルフの男に、あたりは一時騒然としだす。


 そんな騒ぎの中心へと降り立つように、俺とワトさんはダークエルフの男と気を失っているウラギールの前へと姿を現した。




「遊びは終わりだ、もう諦めろ。どうあがいてもお前らの勝ち筋はもうない」

「こ、これ以上はお互いに無益です。自首していただけませんか?」




 7号に擬態したバイクから居り、非殺傷弾の入った拳銃を構える。


 ワトさんも万が一のために警棒を構えながら、ダークエルフの男と相対した。




「終わり……? こんなところで? 僕とウラギール様の夢が……?」

「言っておくが余計な動きを見せれば容赦なく撃つぞ?」




 呆然としたまま俺達を見つめるダークエルフの男。


 かと思えば唇の端を邪悪な三日月状に歪めながら「クックックッ!」と悪役じみた笑みを溢し始めた。


 刹那、俺は有言実行とばかりに非殺傷弾をダークエルフの男の顔面に数発入れる。




「ぐがぁっ!? ごぉっ!?」

「ちょっ、ホームズさん!? やり過ぎでは!?」

「ちゃんと警告はした」




 慌てて俺の持っていた拳銃を取り上げようとするワトさん。


 同情なんかすんなよワトさん?


 コイツらは無関係の人間の命を弄んだ極悪人だぞ?


 情けをかけるな、容赦はするな。


 俺達が迷えばその分だけ人が死ぬと思え。




「犯罪者に慈悲はない」

「それにしたってやり過ぎですっ!? もう少し話しを聞いてあげても――」

「う、ぐぅ……ハハッ! アッハッハッハッハッ!」




 顔面を撃ち抜かれて(もだ)え苦しんでいたダークエルフの男が突然狂ったように笑い始める。


 鼻は曲がり顔中血だらけのクセに、瞳だけは燦々(さんさん)と輝いていて……どことなく狂気じみたナニカを感じてやまない。




「痛みで気でも狂ったか? 安心しろ、今楽にしてやる」

「だからダメですってば! やめてくださいホームズさんっ!」

「アーッハッハッハッハッハッハッ! 終わり? いや終わらないね! 僕とウラギール様の夢はこんなチンケな所では終わらないさ!」




 狂ったような笑みを浮かべながらダークエルフの男はそう言うと、俺達の一瞬の隙を突くように、


 ――ガリッ!


 自分の舌を全力で噛み切った。




「ひぃぃっ!? こ、この人、一体ナニを!?」

「……こうなる前にさっさと意識を飛ばしたかったんだけどなぁ」




 ワトさんが邪魔をするから、むざむざ犯人をあの世に逃がしちまったじゃねぇか。


 チッ、せめてウラギールだけは生きて回収しねぇとな。


 なんてことを考えていると、


 ――ブゥンッ!


 とダークエルフの男を中心に巨大な魔法陣が浮かび上がる。




「ゴホッ!? あ、あの方からいただいた力を今こそっ! ウラギール様のためにっ!」

「――ッ!? ワトさんっ!」

「えっ? こ、この魔法陣は一体――キャッ!?」




 ガバッ! とワトさんを抱きかかえ、急いで7号に飛び乗る。




「ちょっ、ホームズさんっ!? どこを触っているんですか!? セクハラですっ!」

「うるせぇっ! 俺が本気でセクハラをしたらこの程度で済むワケがないだろうが小娘っ! いや今はそんな事を言っている場合じゃねぇ、掴まれ!」




 ブルンッ! とアクセルを吹かして慌てて(ソラ)に向かって走り出す。


 刹那、巨大な魔法陣が光り輝いたかと思うと、魔法陣の中心に居たダークエルフの男の身体がバキバキッ! と異様な姿に変質し始めて……おいおい、冗談だろ?


 あれはまさか――




「――ドラゴンッ!? ダークエルフの人がドラゴンに変身しましたよ!?」

「GAAAAAAAAAAAA――――――ッッ!!」




 真っ赤なドラゴンに変態したダークエルフの男が雄叫びをあげる。


 それだけで大気はブルブルと震え、ビルの窓がパリパリと割れていく。


 突然のドラゴンの登場に、ブロードウェイの住人たちが慌てた様子で逃げ惑い始める。


 怒号と悲鳴が入り混じる中、事態を把握したらしい警察が現場に集まり始める。


 だがドラゴンはそんな警察なんぞに目をくれることもなく、空中を疾走する俺達だけを真っ直ぐと見つめており……あっ、ヤバい。


 これは本気でヤバいかもしれない。




「ワトさん、しっかり掴まっておけよ? 今から地獄の鬼ごっこ第二幕のスタートだ」

「地獄の鬼ごっこ? ホームズさんはナニを」




 言っているんですか? と続くハズだったワトさんは台詞は、ドラゴンの羽ばたきによってアッサリとかき消された。


 見ると俺の予想通り、ドラゴンに変態したダークエルフの男は弓矢のような勢いで飛び上がると、真っ直ぐ俺達めがけて突進してきてっ!




「キタァァァァァァァ~~~~~ッッ!? ドラゴンきました、ホームズさぁぁぁぁぁ~~~んっ!?」

「喋るな、舌噛むぞっ!」




 俺は全力で車体を加速させながら、ワトさんと共に夜空を滑空し始める。


 そんな俺達を追いかけるように元ダークエルフのドラゴンは空を泳ぐ。


 こうして世にも珍しい人間とドラゴンの空中戦が幕をあげた。

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