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2(来栖の激情)

❖十五時/神戸海上/海軍・こんごう型護衛艦こんごう❖


 五四口径一二七ミリ単装速射砲から、摩耶山方面へ向けて立て続けに四発、『特殊砲弾』が発射された。

 阿ノ玖多羅邸上空で分解した砲弾の中から、巨大な十字架が姿を現した。

 四本の十字架が敷地の四方に着弾した瞬間、【大十字中和結界】が発動。

 阿ノ玖多羅家の結界をさらに弱体化させた。





   ❖   ❖   ❖





❖数秒後/阿ノ玖多羅邸上空/空軍・第三〇三飛行隊所属F―15J戦闘機❖


 阿ノ玖多羅邸上空に到達したF―15Jイーグルは、『特殊弾頭』を搭載した空対地ミサイルを発射した。

 ミサイルは、阿ノ玖多羅家の敷地を守る半球型結界の頂点で炸裂した。

 同乗している第七旅団員が、結界にひびが入ったことを霊視にて確認。

 その旨を上空のAWACSへ報告した。





   ❖   ❖   ❖





                          ❖同刻/阿ノ玖多羅邸上空/来栖❖

『作戦成功です!』


 スマホを凝視していた千晶が叫んだ。


『さぁ、降下です。三、二、一、今!』


 来栖は千晶とともに、空へと飛び出した。

 とんでもない風圧が、来栖を襲う。

 だが、苦しくはないし、呼吸も問題ない。

 魔力体の恩恵というわけだ。

 一方の千晶は、戦闘機パイロットが着けるようなヘルメット一体型の酸素マスクをしている。

 普通の人間は、こんな過酷な風圧の下では窒息死してしまうからだ。

 こんな一事を取ってみても、魔力体の強さというものがよく分かる。


(だからって、油断はできない。相手はあの、コクリとルーシャなんだから)


 来栖には、自身が魔力体となったときの記憶がない。

 ルーシャの撃退に成功したのか、それともルーシャに消し炭にされて、ルーシャが『来栖は死んだ』と判断したから帰っていったのか。

 実際に人間としては死んだわけなのだから、後者だったとしても不思議はない。


(大丈夫、怖くはない。戦うって決めたんだ。待っててくれ、マリア!)


 結界の頂点が近づいてきた。

 入ったひびはわずかなもので、しかも早々に自動修復されつつある。


「【AMEN】!」


 器用にも、千晶が撃った。

 エンジェルバレットがひびに着弾する。

 ひびが大きくなったが、なお結界は割れてくれない。


「【毘沙門天の矛】!」


 来栖は超特大の矛を生成し、さらに、


「【ミーノース】!」


 地獄級暴風魔術で射出した。

 鉄が嘶く音とともに、結界に穴が空いた。

 来栖と千晶は、穴の中に飛び込んだ。


 千晶がパラシュートを展開させた。

 ここからはいよいよ、来栖の単独行動だ。


(【文殊慧眼】!)


 母屋の中央の部屋から、強大な魔力反応が四つ。


(マリアがあそこにいる! それに、コクリとルーシャ、阿栖魔大明神も)


 来栖は翼を動かし、弾丸のような速度で母屋の屋根をぶち破った。

 部屋に突入した。

 大昔、マリアに一度だけ連れて来てもらった『当主の間』だ。


 そこに、マリアがいた。

 縛り上げられ、

 衣服を脱がされ、

 今まさにコクリに犯されようとしていた。





 来栖は、沸騰した。

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