能力封印の罠と、最強の証明
王都での活躍が続く中、クロノを危険視した敵対国家の残党が、古代の禁忌とされる呪具「神霊の封印」を起動した。
王都全域を覆う漆黒の結界。それは、範囲内にいるすべての人間から「スキル」を完全に奪い去り、封印する最悪の呪法だった。
「くっ、魔力が練れない……! スキルが使えないわ!」
「俺の身体強化スキルも消えやがった……! 力が入らねえ!」
ルナもガイルも、突如奪われた超常の力に膝をつき、焦燥の表情を浮かべる。
当然、クロノの「完全看破」も、その青い輝きを失い、完全に消灯していた。
「ハハハ! 終わったな、万能の天才クロノ! その強力な『看破』のスキルがなければ、お前はただのひ弱な一般人だ!」
結界を仕掛けた暗殺者たちが、勝利を確信して姿を現す。彼らはスキルに頼らない純粋な戦闘訓練を受けた精鋭たちだった。
しかし、クロノは動じなかった。
スキルが消え、脳内に流れ込んでいた膨大な情報が途絶えたというのに、彼はただ静かに、いつも通りの平凡な鉄のロングソードを構えた。
「勘違いしないでください。僕が今までやってきたのは、スキルに『動かされていた』わけじゃない。スキルの見せた正解を、僕自身の頭で理解し、僕自身の身体で再現してきたんです」
クロノは一歩、踏み出した。
「一度覚えた『身体の最も効率的な動かし方』も、『最適な剣の軌道』も、僕の脳と筋肉がすべて記憶している。スキルが封印されたくらいで、忘れるわけがないでしょう?」
シュッ、と風を裂く音が響く。
それは、スキルによる補強など一切ない、純粋な人間の筋力だけで放たれた一撃。しかしそれは、一切の無駄を削ぎ落とした「完全なる技術の結晶」だった。
「が、は……!? なぜ、スキルがないのに、これほど正確に急所を……!」
暗殺者のリーダーが、自らの胸元を貫いた剣を見て驚愕する。
クロノは、ガイルたちから学んだ剣技、ルナから学んだ魔力の効率的な身体循環、ジードから学んだ重心移動を、自らの「経験」として完全に自分のものにしていたのだ。たとえシステムとしてのスキルが消え去ろうとも、彼が積み上げてきた万能の技術は、何一つ失われていなかった。
「化け物め……! スキルが本体じゃなかったのか……!」
残った暗殺者たちが恐怖に震え、武器を落として逃げ出す。
「ふぅ……。情報が降ってこない分、少し頭を使いましたね」
剣を鞘に収め、クロノは何事もなかったかのように仲間たちに微笑みかけた。
「クロノ、あんたって人は……」
「ハハハ! スキルを封印されてなお、俺たちの技術を完璧に使いこなすか! まったく、とんでもないリーダーだぜ!」
窮地においてなお、スキルの枠を超えた「本物の強さ」を証明したクロノ。彼の伝説は、もはや誰にも縛れない領域へと達していた。




