魔法陣の最適解
王都の演習場。ルナをはじめとする宮廷魔導士団が、実戦を想定した模擬戦を行っていた。しかし、押し寄せる仮想敵の群れに対し、魔導士たちの魔力は底を突きかけ、防衛線が崩壊寸前に追い込まれる。
「くっ、人数が足りないわ……! この規模の魔法を維持するには、あと十人は魔導士が必要なのに!」
ルナが焦りの表情を浮かべたその時、クロノが静かに戦場の中央へと歩み出た。
「ルナ、そのまま魔法の展開を維持して。僕が術式を書き換えます」
クロノの瞳が青く輝く。彼の「完全看破」は、その場に展開されている全ての魔法陣の構造と、そこに流れる魔力の無駄を完全に捉えていた。
「皆さんの魔法は、エネルギーの循環効率が極めて悪いです。十人の魔力が必要なのは、その八割が外に霧散しているから。術式のこの術語と、この魔力経路を交差させてください。そうすれば――」
クロノが手にした杖で空中の一点を突くと、展開されていた巨大な魔法陣の模様が、パズルのピースが組み替わるように一瞬で変化した。
「――えっ!? 魔力の消費が、さっきの十分の一になった……!?」
ルナが驚愕の声をあげる。
「看破」によって最適化された魔法陣は、わずかな魔力で何倍もの威力を発揮する永久機関へと変貌していた。一人分の魔力で、まるで一個師団が一斉に放ったかのような極大の防壁魔法が発動し、仮想敵の攻勢を完全に遮断する。
「一人で足りないなら、一人の効率を十倍にすればいいだけです。これなら、人数不足の心配はありませんね」
涼しい顔で魔法の常識を覆したクロノの姿に、宮廷魔導士たちは言葉を失い、ただただその圧倒的な「万能」の知略に畏敬の念を抱くのだった。




