天理の瓦解
天使ミカエル・レプリカの放つ十四対の翼から、地獄の全階層を焼き尽くさんばかりの光の濁流が解き放たれる。だが、クロノはその光の粒子一つ一つの「波長」と「衝突予測」をすでに完全に看破していた。
「【神への誘い手】アクティブスキル――『因果逆転』」
クロノが杖を一閃すると、天使の放った絶対的な神聖魔力が、空間に満ちる地獄の負のエネルギーと強制的に「融和(中和)」を始めた。光と闇が互いを打ち消し合い、激しいスパークを起こしながら暴走していく。
「な……我が聖なる光が、地獄の穢れと混ざり合うだと!? 制御が……効かぬ!」
天使の冷徹な仮面が驚愕に歪む。体内の魔力バランスが完全に崩壊し、純白だった十四対の翼が、内側からボロボロと崩れ落ち始めた。
「今です、皆さん! 天使の胸元、コアの出力が10%まで低下しました。一撃で盤面をひっくり返します!」
「待たせたな! 地獄の鬼の次は、天使の首を獲る番だ!」
ガイルの大剣が、漆黒の業火を纏って一気に跳躍する。
「私の影、天の光すらも侵食する。……お調子者、合わせろ!」
ジードの影が天使の視界を完全に奪い、千代の妖刀がその防御障壁の綻びを正確に切り裂いた。
「ルナ、仕上げの魔力最適化を!」
「これで終わりよ! 終焉の魔術!」
4人の完璧な同時攻撃が、バランスを失った天使のコアへと直撃する。
凄まじい閃光と共に、天界の最高戦力は地獄の底へと霧散し、その場には静寂だけが残された。
「ふぅ……天の理も、地獄の底ではただの歪んだ法則に過ぎませんね」
クロノは静かに息を吐き、仲間たちを見つめた。神、経済、裏社会、そして地獄の悪鬼や天使すらも看破してみせた少年たちの前に、もはや恐れるべき盤面など存在しなかった。彼らは確かな足取りで、地獄のさらに深淵へと歩みを進めていく。




