絶望の底に舞い降りる「異端の天使」
獄卒長を撃破し、さらに深く暗い地獄の第2階層「針の山」へと足を踏み入れたクロノたち。だが、そこで彼らを待ち受けていたのは、地獄の悪魔でも鬼でもなかった。
上空の禍々しい雲を割って降り注いだのは、あまりにも場違いな、神聖で冷徹な純白の光。
そこにいたのは、頭上に黄金の輪を戴き、背中に十四対もの巨大な翼を持つ存在――地獄の亡者たちを冷酷に駆逐するために天界から派遣された、裁きの天使「ミカエル・レプリカ」だった。
「穢れた生者、そして地獄のバグよ。神の秩序に基づき、この場で一粒子残さず消去する」
天使が掲げた光の聖剣から、地獄の業火さえも掻き消すほどの極大の熱線が放たれる。
「くっ、今度は天界のトップクラスが相手かよ……! 相性が悪すぎる!」ガイルが大剣を盾にするが、その光圧だけで数メートルも押し戻される。
千代の影縫いも、天使自身が放つ圧倒的な「神聖光輝」によって近づくことすらできずに消滅してしまった。
物理、魔法、隠密――すべてを光の力でねじ伏せる、地獄の鬼をも上回る絶対的な戦闘力。
しかし、クロノの「完全看破」の瞳は、その眩い光の奥にある「決定的な矛盾」を捉えていた。
「ルナ、千代さん、下がってください。あの天使……一見すると完璧な神の使いですが、この『地獄』という負のエネルギーに満ちた空間にいるせいで、自身の『神聖魔力』を維持するために体内で凄まじい負荷を起こしています」
クロノは不敵に微笑み、手にした純白の杖を静かに天使へと向けた。
「あなたはこの世界のシステムに逆らって、無理に光を放っている。――なら、その光のベクトルをほんの少し『誘って(エスコート)』あげれば、自重で崩壊します」
地獄の底で激突する、天界の最高戦力と、あらゆる理を看破する少年。本当の「神域の戦い」が、ここから始まる。




