地獄の絶対強者「獄卒長」
地獄の第1階層の門を突破したクロノたちの前に、空間を引き裂くような咆哮が響き渡った。地獄のシステムそのものから無限の魔力を供給される、巨大な「獄卒長」の登場である。
その皮膚はあらゆる刃を弾く鋼鉄より硬く、手にした金棒の一振りで周囲の地形が文字通り消滅する。
「ガハハ! こいつは骨がありそうだぜ!」
ガイルが大剣を構えて突撃するが、獄卒長の圧倒的なパワーの前に一撃で弾き飛ばされ、千代の神速の抜刀術すらも、その超再生能力の前に微かな擦り傷しか残せない。
「物理も属性魔法も効かない……! この鬼、強すぎるわ!」
ルナが焦りの声を上げる。地獄のバフを受けた鬼は、これまでの敵とは次元が違う「不死身の存在」だった。
しかし、クロノの瞳は、激しく動き回る獄卒長の「魔力の流れ」を1ミリの狂いもなく捉えていた。
「いいえ、どんなに強くても、彼はこの『地獄のシステム』に生かされているだけのプログラムです。――つまり、供給源を断てばただの置物(、、)になります」
クロノが純白の杖を掲げる。
「ルナ! 獄卒長の足元、半径3メートルの『大地の因果』を一時的に遮断してください。地獄からの魔力供給を0.01秒だけストップさせます!」
「了解! 理論値最大、カットアウト!」
ルナの魔法が地面を穿ち、鬼の身体から黒いオーラが霧散した。その瞬間を、クロノは見逃さない。
「千代さん、ジードさん! 鬼の右足首にある『再生の核』を影縫いで固定! ガイルさん、魔力供給が途絶えた今の彼なら、ただの『脆い岩』です。全力を叩き込んでください!」
「っしゃあああ! ぶっ飛べえええッ!!」
ガイルの渾身の一撃が、魔力を失った獄卒長の巨体を内側から粉砕した。絶叫と共に、地獄の絶対強者だったはずの鬼が、光の塵となって消滅していく。
「ふぅ……。どれだけ個体の戦闘力が高くても、その『仕組み』さえ看破してしまえば、崩すのは容易いですね」
クロノは静かに杖を収め、先へと続く暗い奈落の道を鋭く見据えた。




