新章・地獄編(インフェルノ)――亡者の掟
東京の次元の裂け目を越えたクロノたちが辿り着いたのは、空が禍々しい紫に染まり、大地から不気味な業火が噴き出す世界――文字通りの「地獄」だった。
「おいおい、今度はえらく物騒な場所に導かれちまったな……。空気が硫黄臭くてたまらねえぜ」
ガイルが顔をしかめ、千代も刀の柄に手をかけながら周囲を鋭く警戒する。
この世界では、通常の生物が持つ「生命力」や、日本で培った「科学」の法則は一切通用しない。存在するすべての階層が、閻魔や悪魔といった絶対的な「審判者」たちのルールによって支配されていた。
当然、クロノたちのステータスにも「亡者の呪い」による強力なデバフがかかり、身体が燃えるように熱く、重くなっていく。
「なるほど……。生者がここを歩くこと自体が、この世界のシステム上『大罪』と定義されているわけですか」
クロノの瞳が青く輝く。
『森羅万象・完全看破』。彼が見据えるのは、地獄を流れる「業火のエネルギーの法則」と、亡者たちを縛る「因果の数式」だった。
「ルナ、僕たちの周囲の空間の『熱伝導率』を一時的に反転させてください。地獄の業火の熱を、そのまま僕たちの『防御バフ』へと変換します」
「えっ、熱さを防御力に変えるの!? ……やってみるわ、魔力反転!」
ルナが魔法陣を展開した瞬間、クロノたちを苦しめていた熱風が、一転して彼らの身体を守る頑強な鎧へと姿を変えた。身体の重みが一気に消え去る。
「ジードさん、千代さん。前方にこの階層を監視する『獄卒』の群れがいます。彼らは『罪人の気配』を察知して動くプログラムだ。――なら、僕たちの気配を『清廉潔白な聖者』のデータに書き換えます。僕の影に隠れて、一気に背後を取ってください」
「了解。地獄の鬼ごっこか、悪くないね」
「主の御心のままに。……消えよう」
二人の影が完全に気配を消し、獄卒たちの死角へと滑り込んでいく。
「ガイルさんは、あの巨大な門の『結合部』を一撃で叩き割る準備を。……さあ皆さん、地獄のルールがどれだけ厳格でも、数式である以上は『正解の抜け道』が存在します。僕たちのやり方で、この世界を看破しましょう」
生者の立ち入りを拒む絶対の死地。しかし、万能の少年クロノにとっては、ここもまた新たなる「攻略対象」に過ぎなかった。地獄の底を揺るがす、前代未聞の無双劇が幕を開ける。




