神の降臨と、絶対絶望の盤面
大地下迷宮の最深部、機械巨兵が崩壊した光の渦の中から、世界が震えるほどのプレッシャーが放たれた。空間が歪み、現実の法則がパチパチと音を立てて軋む。
「人間よ、分を弁えよ」
現れたのは、世界のシステムそのものを管理する上位存在――審判の神「ゼノス」だった。敵対国家の残党が遺した最後の執念の術式が、世界の防衛本能を狂わせ、クロノたちを「世界のバグ(排除対象)」と認識させて神を召喚したのだ。
その存在感は、これまでの天災や大魔獣とは文字通り次元が違った。
「くっ……なんだ、この重圧は……! 身体が、動かない……!」
ガイルが歯を食いしばるが、神の放つ「神威」の前に、一歩を踏み出すことすらできない。
「魔力が……世界中の魔力が、あの神に吸い取られていく……。魔法が、発動すらしないわ……!」
ルナは杖を握りしめたまま、その場に崩れ落ちそうになる。ジードの隠密も、神の絶対的な視界の前にはただの紙切れ同然だった。
【神への誘い手】のバフをもってしても、相手が「世界そのもの」を操る神では、引き上げるための基礎ステータスすら無に帰されてしまう。
かつてない、絶対的な人数不足ならぬ「圧倒的な戦力不足」。
完全な、超・苦戦。
しかし、クロノの瞳だけは、神の放つ盲目的な光の中でも、微かに青く輝き続けていた。彼の「完全看破」は、神という究極の存在の「構造」すらも、必死に解読しようとしていた。
「……ガイルさん、ルナ、ジードさん。まだ、終わりじゃありません」
クロノは一歩、また一歩と、神の威圧を撥ね退けるように前に出る。
「神様。あなたが『世界のシステム』そのものなら、その行動にはすべて、あらかじめ決められた『プログラム(法則)』があるはずだ。――なら、僕にはその正解が見えます」
全能力が通じない絶対の神に対し、クロノは手にした平凡な鉄の剣を、静かに構えた。




