新ジョブ【神への誘い手(エスコート)】
「最深部の大地下迷宮」を攻略したクロノの前に、神殿の奥から純白の光を放つ一本の杖が出現した。それは、世界のシステムが「既存のどの職業にも当てはまらない領域」に達した者にのみ授ける、神話級の隠しジョブへの招待状だった。
『固有ジョブ【神への誘い手】が解放されました』
ギルドカードに刻まれたその未知の職業名を見て、ルナが不思議そうに首を傾げる。
「『神への誘い手』……? 聖職者の最上位職かしら。でも、攻撃魔法も回復魔法も、アクティブスキルの欄には何も表示されていないわよ」
「いや、これもまた、言葉通りの意味じゃないな?」
ジードがニヤリと笑う。その通り、クロノの「完全看破」の瞳には、この職業が持つ「真の役割」がすでに100%見えていた。
「ええ。これは人を癒やす職でも、神の奇跡を乞う職でもありません。――自分の仲間を、文字通り『神の領域』へと強制的に引き上げる(誘う)ための、究極のバフ・サポート職です」
神域の連携
その真価を試す機会は、すぐに訪れた。
迷宮の異変を察知し、神殿の防衛システムである古代の機械巨兵「アルカディア」が起動したのだ。その装甲は神の加護を受け、あらゆる物理攻撃も極大魔法も完全に無効化する絶対無敵の盾。
「物理も魔法も通じねえだと!? さすがに分が悪いぜ!」
ガイルがさすがに冷や汗を流す。
「いいえ、皆さんの限界の『先』へ案内します。【神への誘い手】のスキル――『神域同行』」
クロノが純白の杖を掲げると、ガイル、ルナ、ジードの身体がまばゆい黄金の光に包まれた。
「ガイルさん、あなたの剣技の軌道、脳内へのトレースを100%から『500%』に引き上げました。今のあなたなら、空間そのものを切り裂けます。……いってらっしゃい」
「おいおい、身体が軽すぎる……いや、世界が止まって見えるぞ! これが神の領域かよ!」
ガイルが跳躍一閃。ただの物理攻撃のはずの斬撃が、神の加護の装甲ごと、機械巨兵の右腕を空間ごと綺麗に消し去った。
「ルナ、あなたの魔法陣の最適化を、僕の脳の演算速度と完全に同期させました。マルチタスクで100個の極大魔法を同時展開してください」
「嘘、頭の中にクロノの『正解』が溢れてくる……! これなら、神の数式だって一瞬で紡げるわ!」
ルナが指先を振るうだけで、虚空に100重の超魔術陣が展開され、絶対無敵のはずの巨兵のバリアを消滅させる。
「仕上げはジードさん。存在確率を0.001%まで薄めました。概念としての『一撃』をどうぞ」
「気配どころか、自分の存在自体が消えてる気分だ。――じゃあ、お命頂戴」
ジードが巨兵の胸元のコアをただ指先で弾いた瞬間、巨兵の全システムが内側から崩壊し、光の塵となって霧散していった。
常識の向こう側へ
「はは……、俺たちの力を引き出すだけで、神話の巨兵を秒殺かよ。クロノ、お前が後ろにいるだけで、俺たちはいつでも神になれるってわけだな」
ガイルが大剣を担ぎ直し、興奮冷めやらぬ様子で笑う。
「僕はただ、皆さんが持っている本来の可能性を、一番正しいルートで引き出しただけです。僕一人の力じゃ、あの巨兵は倒せませんでしたから」
クロノは杖を収めると、いつものように控えめで、しかし絶対の信頼を込めて仲間たちに微笑んだ。
どんな不遇職であっても、どんな未知の職業であっても、クロノの手にかかれば世界を覆す最強の武器になる。万能を極めた少年と、神の領域へと誘われた最強の仲間たちの冒険は、もはや世界の誰も追いつけない高みへと続いていくのだった。




