呪いの代償
あらゆるジャマー(封印具)を破られた敵の首謀者は、最後の手段として自らの命と魂を捧げる禁忌の儀式を敢行した。
「ガハハ! ならば、我が全存在を『代償』とし、お前たち全員の存在を消滅させる呪いを呪詛の神へ捧げる!」
黒い泥のような呪怨が津波となって、クロノたちへ押し寄せる。それを受け止める側にも、相応の過酷な代償を求める絶対の因果。敵が命を賭した以上、それを防ぐには味方の誰かが命を賭さねばならない――それがこの世界の理だった。
「僕がいく!」とガイルが大剣を構え、「私が防ぐ!」とルナが魔力を搾り出そうとする。
「待ってください。そんな悲しい『代償』の払い方は、正解じゃありません」
クロノは仲間たちの前に進み出ると、再び「看破」の瞳を輝かせ、不敵に微笑んだ。
世界の法則すら見抜く彼の脳内には、呪詛の神が要求している「代償の等価交換式」が完全に視覚化されていた。
「呪いが求めているのは『命のエネルギー』。何も僕たちの命である必要はない。……ルナ、ジードさん、僕が今から指示する大地の魔力の『大動脈』を、一瞬だけこじ開けてください!」
「了解!」
二人がクロノの指し示す地面の一点を突くと、そこから火山が噴火するかのような、莫大で、かつ誰のものでもない「星の生体エネルギー」が天に向かって噴き出した。
クロノはそのエネルギーの奔流を「建築家」の技術で瞬時に一本の巨大な避雷針へと成形し、敵の呪怨の直撃へと回した。
ドゴォォォン!!!
激しい光と闇の衝突。敵の首謀者は、自らの命を削って放った呪いが、ただの「自然のエネルギー」によってあっさりと相殺され、中和されていく光景に目を見開いた。
「バ、馬鹿な……! 命の代償の呪いだぞ!? なぜお前たちは無傷なのだ……!」
「等価交換の式を書き換えただけです。あなたが自分の命を削ったのに対して、僕はただ、そこにあった大地の力を借りた。代償の支払いは、これで完了です」
呪いのエネルギーをすべて吐き出し、代償だけを支払った敵の首謀者は、その場に力なく崩れ落ちた。
「ふぅ……。危うく誰も欠けることなく、等価交換を成立させられましたね」
クロノが振り返ると、ガイルたちは安堵の息を漏らし、同時に言葉を失っていた。
「呪いの代償すら、大地のエネルギーで肩代わりさせるなんて……。あんた、本当に神様を騙すような真似をするわね」
ルナが苦笑交じりに言うと、クロノは「ただの効率的な計算ですよ」といつものように涼しく笑うのだった。




