第6回「カスミタウンの街」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
稲荷荘を出た美穂は、カスミ湖の湖畔を歩いていた。
目の前には、大きな湖。
その向こうに見える街を目指して、湖をぐるりと回りながら歩いていく。
「結構、距離あるなぁ……」
美穂は振り返る。
遠くに、稲荷荘の大きな屋根が見える。
「……あそこが、あたしの家か」
異世界に来て、まだそれほど時間は経っていない。
それなのに、自分の家がある。
そう思うと、少しだけ不思議な気持ちになった。
「ねえ、イナリさま?」
いつものように話しかける。
イナリからの返事はない。
「……?」
美穂は歩きながら、もう一度呼びかける。
「イナリさまー?」
やっぱり返事がない。
「……おかしいな?」
美穂は足を止めた。
周囲を見回す。
聞こえるのは、風の音と鳥の鳴き声だけ。
少し考える。
「まさか……稲荷荘から離れたから?」
これまでずっと頭の中に聞こえていた声。
それが突然なくなった。
「……今はイナリさまと話せない……」
少し寂しくなる。
「……まあ、仕方ないか……」
美穂は前を向く。
「街では自分で頑張れってことだよね」
そう言って歩き始める。
しばらくすると――。
街の入口が見えてきた。
「わぁ……!」
美穂の目が輝く。
大きな入口の門。
看板には『カスミタウン』と書かれている。
「カスミタウンかぁ……」
自然と口にだす。
その向こうには、たくさんの建物が並んでいる。
道には人が行き交い、商人が声を上げている。
荷物を運ぶ馬車も走っている。
見たことのない服を着た人たち。
剣を腰に下げた冒険者らしき人たち。
屋台からは、香ばしい匂いが漂ってくる。
「これが……異世界の街!」
美穂は思わず声を上げた。
街へ入る。
石畳の道。
木造の建物。
色とりどりの看板。
「すごい……」
きょろきょろと辺りを見回す。
「本当に異世界なんだ……」
すると、腹の虫が鳴った。
「……お腹すいた」
美穂はお腹を押さえる。
「そういえば、異世界に来てから何も食べてない」
近くに食堂らしき店がある。
「入ってみようかな」
美穂は店の扉を開けた。
「いらっしゃい!」
明るい声が響く。
美穂は店内を見回す。
木のテーブル。
椅子。
壁にはメニューが並んでいる。
「……お米はあるかな?」
メニューを見る。
パン
スープ
肉料理
芋料理
豆料理
「……ない」
美穂は少し首を傾げる。
「お米、ないんだ」
イナリが言った通り、お米がない世界だ。
美穂はメニューを見ながら笑う。
「じゃあ……やっぱり、作らなきゃね」
美穂は米作りを頑張ろうと気持ちが強くなった。
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