第42回「イナリ降臨」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
稲荷庵へと変わった、その翌日――。
美穂とフロリィは、田んぼの前にいた。
「昨日は凄かったねー」
「はい。まさか建物まで変わるなんて……」
二人で稲荷庵を眺める。
その時――。
ふわっ。
稲荷庵の前に、淡い光が集まり始めた。
「……?」
美穂が振り返る。
「なにこれ?」
光が少しずつ、人の形になっていく。
足……身体、そして、顔……。
光が消える――。
そこに、一人の女性が立っていた。
「…………」
美穂は固まる。
フロリィも、目を丸くしている。
「……イナリさま?」
美穂が呟く。
女性が微笑む。
「はい」
間違いない――。
いつも美穂の頭の中に聞こえていた声。
田んぼの女神、イナリミノル。
その姿が、初めて目の前にある。
「イナリさまが……いる……」
美穂が恐る恐る近づく。
「本当に、実体化したんだ……」
「ええ」
イナリは自分の手を眺める。
「どうやら、稲荷庵の周辺なら降臨できるようになったみたいですね」
「凄い……!」
フロリィも驚いている。
「これが……田んぼの女神さま……」
イナリは二人を見て、にっこり笑う。
「ところで――」
イナリが美穂を見る。
「私の分の塩むすびは?」
「…………」
美穂が固まる。
「……もうないです」
「えっ?」
イナリが目を丸くする。
フロリィが申し訳なさそうに手を上げる。
「……全部食べました……」
「だって……美味しかったので……」
「私の分はっ!!」
初めて実体化した田んぼの女神。
その第一声は――。
塩むすびの催促だった。
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