第36回「千歯こき」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
稲架に掛けてから、しばらく。
刈り取った稲は、すっかり乾いていた。
美穂は稲架に並んだ稲束を見渡す。
「よしっ! 次は脱穀だね!」
「脱穀……ですか?」
フロリィが首を傾げる。
「うん。稲から籾を外すの」
「どうやって外すんですか?」
「それはね……」
美穂は稲荷荘の納戸へ駆け込む。
「えーっと……」
納戸の中を探す。
農具……道具……見慣れない道具。
「これじゃない……」
「これも違う……」
そして――。
美穂の手が止まった。
「……あっ! これだ!」
引っ張り出したのは、昔ながらの農具だった。
「千歯こき!」
「せんばこき?」
美穂は嬉しそうに持ち上げる。
「これで脱穀できるよ!」
田んぼの脇へ戻る。
美穂が千歯こきに稲束を通す。
ザザッ……。
籾が外れて、下へ落ちる。
「おお……!」
フロリィが目を丸くする。
「本当に外れました!」
「でしょ!」
美穂は得意げに笑う。
「じゃあ、やってみる?」
「はい!」
フロリィも挑戦する。
ザザッ……。
「こうですね」
「そうそう!」
美穂も続ける――ザザッ……。
フロリィ――ザザッ……。
美穂――ザザッ……。
「……結構ありますね」
「うん」
ザザッ……。
「まだまだありますね」
「うん……」
ザザッ……。
ザザッ……。
ザザッ……。
気がつけば、二人は無言になっていた。
「…………」
「…………」
ひたすら稲束を千歯こきに通していく。
ザザッ……。
ザザッ……。
ザザッ……。
「美穂さん……」
「なに?」
「これ、いつ終わります?」
「……わかんない」
「……」
それでも二人は手を止めない。
目の前には、まだまだ稲束が残っている。
「よーし……」
美穂は千歯こきを握り直す。
「終わるまでやるよ!」
「はい……!」
こうして二人は――。
延々と脱穀を続けるのだった。
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