第33回「初穂の儀式」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
今日は、稲刈りの日――。
稲荷荘の前には、一面の黄金色の稲穂が広がっている。
「フロリィちゃん、今日はね、稲刈りの前にやることがあるの」
「稲刈りの前に?」
「うん。初穂の儀式!」
「初穂の儀式ですか?」
美穂は、黄金色の稲穂の中へ入っていく。
そして、しばらく稲を眺める。
「うーん……」
一本一本を見比べていく。
「これ!」
美穂が選んだのは、穂が大きく実り、たくさんの籾をつけた稲穂だった。
「これが凄くたわわ!」
「たわわ……?」
「実がいっぱいってこと!」
「なるほど」
美穂はその稲穂を丁寧に刈り取る。
そして、あらかじめ作っておいた小さな祭壇へ向かった。そこには、稲荷荘で使っている道具と、簡素な供物が置かれている。
美穂は初穂を祭壇に捧げる。
そして、静かに頭を下げた。
「田んぼの女神、イナリミノルさま……」
『はい』
「異世界で、初めて作りました稲穂です」
美穂は黄金色の稲穂を見る。
「お納めください」
深く頭を下げる。
しばらくして――。
『……なんか大袈裟ですね』
「大袈裟じゃないよ」
美穂は顔を上げる。
「これは大事なことなんです」
『そうですか?』
美穂は田んぼを振り返る。
「苗を植えて、育てて、守って……」
そして、ここまで育った。
「最初にできたお米を、ちゃんとイナリさまに報告したかったの」
『……』
少しの沈黙。
『……ありがとうございます、美穂』
イナリの声が、いつもより柔らかく響いた。
隣で見ていたフロリィは、静かに微笑む。
「……そういうものなんですね」
「うん!」
美穂は立ち上がる。
「じゃあ、そろそろみんなが来るよ!」
黄金色の田んぼを見渡す。
「いよいよ、稲刈りだー!」
今日は、この田んぼで初めての収穫の日になる。
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