第32回「街の人は気づく」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
黄金の稲穂が実った田んぼ――。
その姿は、カスミタウンの対岸からもよく見えた。街の人たちは、少しずつ気づき始めていた。
「なあ、あれ何だ?」
「対岸の家の前にあるやつか?」
「ずいぶん広いな……」
最初は、ほんの数人だった。
気になった人が、稲荷荘までやって来る。
そして――。
「……近くで見ると、すごいな」
一面に広がる黄金色の田んぼ。
風が吹くたび、稲穂が波のように揺れている。
しばらく眺めていると、稲荷荘から美穂が出てきた。
「あれ? こんにちはー!」
「あ、こんにちは」
街の人が、田んぼを指差す。
「これは何を作っているんですか?」
「お米だよ!」
「……米?」
美穂は笑顔で答える。
「うん、お米という食べ物。この世界には、あんまりないんだよね」
「へぇ……」
街の人は、もう一度田んぼを見る。
「これが食べ物になるんですか?」
「なるよ!」
美穂は黄金色の稲穂を眺める。
「もうすぐ収穫できるから……」
少し考えてから、笑う。
「よかったら、収穫したら一緒に食べませんか?」
街の人が驚く。
「えっ? いいんですか?」
「もちろん!」
美穂は胸を張る。
「それは楽しみですね」
「私も食べてみたいです」
「どんな味なんだろう?」
その日――。
田んぼを見に来たのは、数人だけだった。
けれど――。
翌日には、また別の人が。その次の日には、さらに別の人が。黄金の田んぼを見に、少しずつ人が集まるようになっていった。
美穂は、そんな人たちを眺めながら、嬉しそうに笑う。
「なんだか、見学者が増えてきたな」
美穂は、ぽつりと呟いた。
黄金色の田んぼは、少しずつ街の人たちにも知られ始めていた。
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