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稲り実る〜異世界でも米作りはそれなりに大変〜  作者: さば味リン


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30/43

第30回「バッタの魔物」

※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。

出穂から、しばらく経った――。

田んぼの稲は順調に育っている。


「今日も元気そうだねー」

稲穂を眺めながら、畦道を歩く。


すると――。


ピョン。

「ん?」

小さなバッタが、田んぼの中を跳ねた。


「バッタか」

美穂は少し眺める。


「まぁ、小さなバッタぐらいなら?」


ピョン。

もう一匹。

「……あれ?」


ピョン。

さらに一匹。

「……増えてない?」


美穂が田んぼを見渡す。

小さなバッタが、あちこちで跳ねている。


「まぁ……これくらいなら」

美穂は少し不安になりながらも、田んぼを見続ける。


その時――。

影が落ちた。


「……ん?」

美穂が空を見上げる。


何かが飛んでくる。

大きい――。


どんどん大きくなる。


「……え?」

バサバサッ!

巨大なバッタが、田んぼへ降り立った。


その体長――およそ1メートル。


「…………」

美穂は固まった。

「デカっ!」


巨大バッタが、長い脚を動かす。

そして、稲へ向かって跳びかかる。


「ちょっと待って!」

美穂の顔から笑顔が消える。

「それ、あたしのお米ー!」


大切に育ててきた稲。

田植えから始めて、毎日見守ってきた。


出穂して。

小さな花まで咲いて。

もうすぐ実りを迎える。


それを――。

「食べられてたまるかー!」


美穂は巨大バッタを睨みつけた。


初めてだった。

自分が育てたものを、失うかもしれない危機が訪れたのは――。


◇


ムシャッ!

美穂の目の前で、バッタの魔物が稲を一株食べた。


「……え?」


一度、口を動かしただけ。

それだけで、稲が一株、丸ごとなくなっている。


「ひぃー!」

美穂が悲鳴を上げる。


その時――。

『なるほど、バッタですか!』

イナリの声が聞こえた。


「イナリさまぁ! どうしよう!」

『駆除一択です! でないと全滅ですよっ!』


「全滅は困るっ!」

美穂は慌てて草刈りガマを構える。


しかし、その間にも――。


ムシャッ!

「ひぃー!」

二株目が食べられた。


「これ以上はダメだぁー!」

美穂は田んぼの中を走る。


田んぼの加護を受けた身体が、力強く地面を蹴る。


バッタの魔物が跳び上がる。

美穂は、その動きを見ながら――。


「そこだぁー!」

草刈りガマを大きく振り上げる。


「草刈りガマスラーッシュ!」


ズババーッ!

草刈りガマが、バッタの魔物を捉えた。


巨大な身体が地面に落ちる。

「……倒した?」


美穂は恐る恐る近づく。

バッタの魔物は動かない。


「や、やった……」


しかし――。

美穂は周囲の稲を見る。

戦いの勢いで、何本かの稲が折れてしまっていた。


「……あ」

美穂の顔が曇る。


「あぁ……稲が折れたぁー……」

目に涙を浮かべながら、折れた稲をそっと起こす。


「ごめんね……」


そして、美穂はバッタの魔物の死骸を田んぼの外へ運び出す。


「また来たら困る……」

美穂は田んぼを見渡す。


まだ小さな被害で済んだ。

けれど、もし気づくのが遅れていたら――。


「……あたしが見てるからねっ!」


美穂は草刈りガマを手にしたまま、田んぼのそばに座り込む。


その日からの昼の時間。

巨大バッタの監視作業も追加された――。

読んでくれてありがとうございます!

毎日【18時20分】に投稿してます。

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