第27回「お泊り会」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
田植えを終えた夕方――。
美穂とフロリィは、稲荷荘へ戻ってきた。
「今日は本当にありがとう、フロリィちゃん!」
「こちらこそ、楽しかったです」
「じゃあ、お礼にご飯作るね!」
美穂は台所へ向かう。
しばらくすると、稲荷荘に美味しそうな匂いが広がった。テーブルの上に料理が並ぶ。
「わぁ……!」
フロリィの目が輝く。
「こんなに作ってくれたんですか?」
「今日は田植え記念だからね!」
二人は並んで食事を始める。
「おいしいです!」
「よかったー!」
二人は今日一日の出来事を話しながら、楽しく食事を続けた。
食事が終わると、美穂が立ち上がる。
「フロリィちゃん、お風呂も入ってね!」
「えっ、いいんですか?」
「もちろん!」
そして――。
「今日は泊まっていくよね!」
「え?」
「せっかくだし!」
美穂は嬉しそうに笑う。
「朝までピロートークだ!」
「ピロートーク……?」
「寝ながらお話するの!」
「なるほど……」
フロリィは少し考える。
「でも、今日はいっぱい田植えしましたから……」
「うん?」
「もう……眠たいです……」
フロリィの目が、すでに半分閉じている。
「えぇー! まだ寝るには早いよ!」
「……ふぁ……」
「フロリィちゃん!?」
美穂は思わず笑ってしまう。
「じゃあ、今日は早く寝て、明日の朝にお話しようか」
「……はい」
田植えを終えた二人の夜は――。
静かに更けていった。
◇
翌朝――。
まだ空気の冷たい時間。
美穂は一人、稲荷荘の前庭に出ていた。
朝の光が、少しずつ辺りを照らしていく。カスミ湖の水面には、淡い空が映っている。
そして――。
目の前に広がる田んぼ。
一面に、小さな苗が並んでいた。
「……」
美穂は、しばらく田んぼを眺める。
風が吹く――。
苗が、サワサワと揺れる。
「……田んぼになったなぁ」
『美穂が作った田んぼですよ』
イナリの声が聞こえる。
「うん……」
美穂は小さく頷く。
この世界に来てから、何も持っていなかった自分が初めて作ったもの。
草を取り、石を取り、畦を作り……。
水を引いて、土を改良して、苗を育てて……。
そして、田植えをした……。
目の前にあるのは――。
美穂が作った田んぼだった。
美穂はその小さな稲を見る。
「あとは……育つのを待つだけだな……」
そのとき――。
「ふわぁー……」
後ろから、眠そうな声が聞こえた。
美穂が振り返る。
そこには、まだ眠そうなフロリィが立っていた。
「おはようございます……」
「フロリィちゃん、おはよー!」
美穂は笑う。
「朝ご飯作るからねー!」
「……ありがとうございます」
フロリィは小さく笑った。
田植えは終わった――。
これからは、この小さな稲たちがゆっくりと育っていく。
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