第23回「コンパニオンプランツ」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
稲荷荘、前庭――。
美穂とフロリィは、田んぼ予定地のそばに並んで座っていた。
「そういえば、フロリィちゃんはなんで森の中にいたの?」
美穂が何気なく尋ねる。
「薬草採取の依頼で森に入ってました」
「そっかー!」
美穂は納得したように頷いた。
そのとき――。
イナリの声が聞こえてきた。
『美穂』
「ん?」
美穂が返事をすると、イナリは続ける。
『薬草なんかも、根を残して採取すれば、植え直して増やせるものがありますよ?』
「えっ! 増えるの?」
美穂が驚いて顔を上げる。
『稲り実る才は米作りに特化していますが、共栄植物なら、成長を促進できる可能性がありますね』
美穂の目が輝いた。
「なるほど……! コンパニオンプランツかっ!」
――コンパニオンプランツ。
一緒に育てることで、お互いの成長を助けるなど、良い影響を与え合う植物のこと……。
田んぼだけではない。
薬草も育てられるかもしれない。
うまくいけば、新しい収入源にもなる。
美穂は、隣にいるフロリィへ振り向いた。
「フロリィちゃん!」
「はい?」
「一緒に薬草、取りに行こう!」
「えぇー!?」
突然誘われ、フロリィは目を丸くした。
「また森に行くんですか!? さっきゴーレムに襲われたばかりですよね?」
「……」
美穂が固まる。
美穂は、手持ちの草刈りガマを見る。
「今度は武器もある!」
「美穂さん、それ農具ですけど……」
フロリィは困惑の表情をしている。
◇
美穂とフロリィは、再び森へやって来た……。
フロリィが周囲を見回し、ある場所を指差す。
「この辺りに薬草がありますよ」
「どれどれ?」
フロリィに教えてもらいながら、美穂は薬草を探していく。
「これは、根っこを残しておこう」
「家の近くに植えるんですか?」
「そうそう!」
採取した薬草をマジックバッグへしまい、二人はさらに森の中を進んでいく。
それからしばらくの間、二人の薬草採取が続いた。
そして――。
薬草の次は、粘土の採取だ。
フロリィが地面を見ながら尋ねる。
「この辺りに粘土がありますね?」
「うん! 田んぼにいっぱい必要!」
美穂は見つけた粘土を、次々とマジックバッグへ入れていく。
薬草を採り、粘土を集める。
二人はそれぞれの作業に夢中になっていた。
そんな中――。
森の奥から、また何かが姿を現した。
「……」
「……」
美穂とフロリィは顔を見合わせる。
そこにいたのは、以前も出会ったゴーレムだった――。
「また出たね!」
「そうですね……」
美穂は草刈りガマを手に取った。
けれど、すぐには構えない。
「でも、ここでは戦わないよ」
「え?」
美穂は、にっこり笑った。
「連れて帰る!」
「えぇ!?」
美穂はゴーレムに背を向けると、一目散に走り出した。
「こっちだよー!」
ゴーレムが、その後を追いかけてくる。
美穂は何度も振り返りながら、ゴーレムを田んぼ予定地のほうへ誘導していく。
そして――。
ゴーレムが田んぼ予定地へ入ったところで、美穂が振り返った。
「ここなら!」
草刈りガマを振り抜く。
「草刈りガマスラッシュ!!」――ズバァー!
ゴーレムが崩れ落ち、その身体が土へと変わっていく。
そして、その土を田んぼに吸収させる。
「よし!」
その一連の様子を、フロリィは呆然と眺めていた。
やがて、ぽつりと口を開く。
「美穂さんって……」
「ん?」
「本当に変わった冒険者ですね」
美穂は少し考える。
「そうかな?」
「はい」
フロリィは、くすっと笑った。
薬草を採り、粘土を集め、ゴーレムを土壌改良に利用する。
そんなことを繰り返しているうちに――。
いつの間にか、空は夕暮れになっていた。
「今日はいっぱい働いたなぁ」
「そうですね」
二人は並んで、帰り道を歩いていく。
しばらく歩いたところで、美穂がフロリィに声をかけた。
「フロリィちゃん、今日はありがとう!」
「こちらこそ。私も楽しかったです」
美穂は嬉しそうに笑う。
「また一緒に行こうね!」
「はい!」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
こうして二人は――。
冒険者として、一緒に一日を過ごした。
そして、また会うことを約束した。
◇
稲荷荘、前庭――。
美穂は、森から持ち帰った薬草を地面に並べていた。
採ってきた薬草を、一つずつ確認していく。
やがて、美穂は田んぼの周りを見渡した。
「うーん……」
『どうしました、美穂?』
「どこに植えようかなって」
美穂が悩んでいると、イナリが答える。
『薬草なら、田んぼの畦で良いのでは?』
「そうだね!」
美穂は田んぼの周囲へ目を向けた。
「田んぼの中には植えないけど、畦ならいいかな」
鍬を手に取り、畦の土を軽く耕していく。
土を整えると、そこへ薬草を一本ずつ植えていった。
「よし。こんな感じかな」
植え終わった薬草を眺め、美穂は満足そうに頷く。
「これがコンパニオンプランツ!」
田んぼの稲と薬草……。
お互いに良い影響を与えてくれることを期待する。
美穂は薬草を見つめながら、ふと思った。
「……でも、本当に稲り実る才で成長するのかな?」
『それを今から試すんですよ』
「うん、そうだった……」
美穂は薬草にそっと手を触れる。
「元気に育ってほしいな」
すると――。
ほんの少しだけ、薬草の葉が元気になったように見えた。
「……お?」
『少し効果があるようですね』
美穂は嬉しそうに笑った。
「お米だけじゃないんだ!」
『きっと、この薬草は共栄植物なのでしょう』
「なるほどね……」
美穂は田んぼへ目を向ける。
そして、その周りに植えた薬草を眺めた。
「だったら……」
美穂の頭の中に、いろいろな植物が浮かんでくる。
「野菜とか、果物とかも試してみたいなぁ」
『ふふっ』
イナリの声が、楽しそうに響く。
「異世界の農業、始まってきた感じがする!」
田んぼの周囲にある畦。
そこに植えられた、小さな薬草。
美穂の農業は、少しずつ広がり始めていた。
読んでくれてありがとうございます!
毎日【18時20分】に投稿してます。




