第22回「武器もってないけど」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
稲荷荘、前庭――。
美穂はフロリィと田んぼ予定地を眺めていた。
すると――。
イナリが、呆れたように話しかけてくる。
『美穂……武器も持たずに森へ入るのは、よくありませんよ』
美穂は、少し気まずそうに目を逸らした。
「……だって……」
『だって?』
問い返され、美穂は少し考える。
そして、もっともらしい理由を口にした。
「武器、高いし!」
『……』
イナリから返事はない。
美穂は、その沈黙を気にすることなく続けた。
「買えないしー!」
両手を広げ、すっかり開き直っている。
さらに、美穂はもう一つ理由を付け加えた。
「それに! 田んぼの外で戦ったら、あたし死ぬしー!」
『……』
今度は、少し長い沈黙が流れた。
美穂は、自分の言ったことに間違いはないとばかりに、じっと返事を待つ。
やがて――。
『……一理ありますね』
「でしょう!」
美穂は嬉しそうに胸を張った。
ところが、イナリはそのまま続ける。
『ならば、武器を渡しましょう』
「え?」
思いがけない言葉に、美穂が固まった。
『納戸に入れておきますよ』
「え! 本当っ?」
美穂は勢いよく立ち上がった。
「フロリィちゃん、ちょっと待ってて!」
「え?」
フロリィが驚いている間にも、美穂は稲荷荘へ向かって走り出す。
「武器、見てくるー!」――ダダダッ!
美穂は、そのまま稲荷荘の中へ駆け込んでいった。
「武器、武器……!」
目的の納戸を見つけると、勢いよく扉を開ける。
「……あった!」
納戸の中には、いくつもの武器が並んでいた。
美穂は、その中から一つを手に取る。
「これかな?」
それは――大きな鎌だった。
普通の草刈りガマとは比べものにならないほど大きい。
美穂は、しばらくその大鎌を見つめた。
「……」
『それです』
「これ?」
『はい』
美穂は恐る恐る持ち上げる。
「重っ……!」
ずっしりとした重さが腕に伝わってきた。
すると、イナリがどこか得意げに説明する。
『それはデスサイズです』
「デスサイズ?」
『死神が持つといわれる、伝説の大鎌です』
「……」
美穂は、改めて大鎌を見る。
黒々とした刃に、巨大な柄。
「怖いって……」
『強力ですよ?』
「いやいやいや!」
美穂は慌てて大鎌を元の場所へ戻した。
「こんなの、怖くて持ち歩けないよっ!」
『普通、武器は怖いものでは?』
「そうだけど!」
美穂は、納戸の中に並ぶ武器を見回した。
どれもこれも、立派なものばかりだ。
「……なんか、あたしには身の丈に合わないんだけど」
美穂は、少しため息をついた。
どうやらイナリは、美穂が扱えるかどうかよりも、とにかく強そうな武器を選んでいるらしい。
「もっと普通のでいいんだけどなぁ……」
◇
美穂は、目の前に置かれたデスサイズを見つめていた。
「……」
大きな刃。
見るからに恐ろしい雰囲気。
「イナリさま」
『はい?』
「これ、丁重にお断りします」
『そうですか?』
「怖すぎるよ!」
美穂はデスサイズを元の場所へ戻した。
「やっぱり、あたしには身の丈に合った武器がいい」
『なるほど』
美穂は納戸の中を探す。
「……あっ」
その中に、一本のカマがあった。
普通の草刈りカマより、少しだけ大きい。
「これ!」
美穂が手に取る。
「うん、これくらいならね」
柄を握って、軽く振ってみる。
「ちょうどいい!」
『なんか気に入ったようですね?』
「うん!身の丈に合ったやつってね」
美穂は満足そうに頷いた。
納戸から出ると、フロリィが待っていた。
「美穂さん、その武器は……?」
「草刈りガマ!」
「……」
フロリィは少し驚いた顔をする。
「美穂さんは、カマ使いなんですね?」
「そう!」
美穂は嬉しそうにカマを掲げる。
「カマとかクワとかねっ!」
「クワも武器なんですか?」
「農家にとっては大事な道具だよ!」
美穂はカマを肩に担ぐ。
「これで魔物が出ても、少しは安心かな」
フロリィは美穂とカマを交互に見る。
「……なんだか、美穂さんらしい武器ですね」
「でしょ?」
美穂は笑った。
伝説の大鎌ではなく――。
美穂が選んだのは、少し大きな草刈りガマだった。
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