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稲り実る〜異世界でも米作りはそれなりに大変〜  作者: さば味リン


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20/43

第20回「田んぼへ誘い込め!」

※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。

森の中――。

美穂は必死に走っていた。

「ひぃー!」


後ろから、重たい足音が迫ってくる。

ズシン! ズシン!


「なんで追いかけてくるのー!」

振り返る。


ゴーレムは、ゆっくりと歩いている。

なのに――。


「速いよー!」

美穂はさらに走る。

「こっちは粘土を探しに来ただけなのに!」


木々の間を抜ける。

枝を避ける。

足元の石を飛び越える。


「もう、こんなところ来なきゃよかったー!」


そのとき。

美穂の頭に、ふと浮かぶ。

「……あ」


稲荷荘。

そして、その前に作っている田んぼ。

「田んぼ……」


美穂は走りながら考える。

「そうだ!」


田んぼの中なら、田んぼの加護がある。

ゴーレムから逃げるだけなら、田んぼまで戻ればいい。


「とにかく、稲荷荘まで戻ろう!」

美穂は方向を変える。


来た道を戻っていく。

しかし――。


ズシン!

「うわっ!」

後ろからゴーレムが迫る。


「近い近い!」

美穂は必死に走る。


腰が痛い。

足も重い。

田んぼの外では、普通の美穂だ。


「田んぼまで……!」

木々の向こう。


少し開けた場所が見えた。

「あっ!」


見覚えのある景色。

「もうすぐ!」


美穂は、ゴーレムから必死に逃げている。

「ひぃー!」


背後から、重たい足音が迫ってくる。

ズシン! ズシン!


「もうちょっと……!」

そして――。


美穂の目の前に、自分が作っている田んぼが見えた。

「あっ!」


美穂の顔が明るくなる。

「ここなら……!」

美穂は田んぼの中へ飛び込んだ。


そして振り返る。

「来い!」


ゴーレムも、そのまま田んぼへ入ってくる。

ズシン!


その瞬間――。

美穂の身体に、力がみなぎった。


「……よし」

足元を踏みしめる。


身体が軽い。

力が湧いてくる。


田んぼの加護。

ここは、美穂のホームグラウンドだ。


美穂は、近くに置いてあった草刈りガマを手に取った。

そのとき――。


『美穂?』

聞き慣れた声が頭の中に響いた。


「イナリさま!」

美穂はゴーレムから目を離さないまま、思わず声を上げる。


『美穂は粘土を取りにいったのですよね?』

「そうです!」

『……なぜゴーレムと戦っているのでしょう?』


美穂は草刈りガマを構えたまま答える。

「それはこっちが聞きたいです!」


ゴーレムが、ズシンと一歩踏み出した。

その巨体に地面が揺れる。


『ふふっ』

「笑ってる場合じゃないですよ!」

美穂はゴーレムから距離を取りながら叫ぶ。


「イナリさま! たすけて!」

『無理ですねぇ』

「ぐぬぬー!」

美穂は悔しそうに歯を食いしばる。


『私は口しか出せませんからね』

「あっ、そうだったー!」

美穂は気を取り直して、草刈りガマを握り直す。


ゴーレムが、また一歩近づいてくる。


「……来るなぁ」

『まあ、美穂なら倒せますよ』


「本当ですかぁー!?」

思わず声が裏返る。


「信じて良いんですね!」

『もちろんです』


美穂はゴーレムを見据える。

相手は自分より何倍も大きい。


ゴーレムが、ゆっくりと近づいてくる。

「……来た」


次の瞬間――。

ズシン!

ゴーレムが突進してきた。


「わー!」

美穂は横へ飛び退く。

そして、チャンスを伺う。


「今だ!」

美穂はゴーレムの懐へ飛び込む。


草刈りガマを大きく振り上げる。

「これでもくらえ!」


そして――。

「草刈りガマスラッシュ!」

ズバッ!


ガマの刃が、ゴーレムを切り裂いた。

土の身体が、大きく崩れる。

ザザザッ……。


ゴーレムは、その場に土の塊となって崩れ落ちた。

「……」


美穂は草刈りガマを握ったまま、固まっている。

「……倒した?」

『倒しましたね』

「……」


美穂はゴーレムだった土の山を見る。

「……草刈りガマ、強っ!」

『ふふっ』


田んぼの中。

美穂は初めて、異世界の魔物を倒した。

読んでくれてありがとうございます!

毎日【18時20分】に投稿してます。

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