第18回「粘土を探してる」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
稲荷荘から少し離れた場所。
美穂は立ち止まり、周囲を見渡していた。
「……粘土どこよ?」
粘土の採取場所が分からない。
そもそも、美穂にはこの辺りの土地勘がない。
「うーん……」
適当に歩いて、変な場所へ入り込むのも危険だ。
この世界には魔物がいる。
美穂は冒険者ガイドを取り出した。
地図を広げる。
「この辺り……」
地図を見ると、近くに森がある。
「森の中って、魔物出るかなぁ」
冒険者ガイドの該当ページを確認する。
森の名前の横には――。
魔物あり・注意
と書かれていた。
「イナリさまは、森の中に粘土あるっていってたし……」
美穂は静かにガイドを閉じる。
「ふぅ……少し憂鬱」
粘土を探すだけなのに、魔物のいる森へ入る必要がある。
美穂は腕を組んだ。
「でも……」
ふと、自分の持つ力を思い出す。
稲り実る才。
イナリから直接授かった、稲作に特化した才。
「……これってさ」
美穂は考える。
「粘土、探せるんじゃない?」
稲作のために必要なもの。
田んぼの土を改良するために必要な粘土。
それなら――。
美穂は少し期待しながら、目を閉じる。
「田んぼの土改良のために粘土が必要!」
ぎゅっと拳を握る。
「粘土はどこに?」
そして――。
「稲り実る才のお導きは?」
その瞬間。
ピンッ!
「……!」
美穂の頭の中で、何かが閃いた。
「あ!」
美穂が目を開く。
「なんか閃いた!」
そして、何かに導かれるように顔を上げる。
「あっち!」
美穂が指差す。
「あっちになんかありそう!」
美穂は冒険者ガイドを手に持ったまま、歩き出した。
目的地はまだ分からない。
けれど――。
稲り実る才が、美穂を導き始めていた。
◇
美穂は、稲り実る才に導かれるまま歩いていた。
「こっち……かな?」
しばらく進むと、地面の様子が変わってきた。
「……あれ?」
土の色が、少し違う。
美穂はしゃがみ込み、地面を手で掘ってみる。
「これ……」
指先にまとわりつく、ねっとりとした土。
「粘土だ!」
ようやく見つけた。
「やったー!」
美穂は立ち上がる。
「これだけあれば……」
そう思ったところで、ふと気づく。
「……一反分だよね」
一反の田んぼに、粘土を混ぜる。
「粘土、めっちゃいるんでは?」
美穂は、目の前の粘土を眺めた。
「……」
しばらく考える。
「よし!」
やるしかない。
美穂は稲荷荘の納戸から持ってきたマジックバッグを取り出した。
中には大量の物を収納できる、便利な魔法の袋。
「これ、入るだけ入れよう」
粘土を掘る
袋に入れる
また掘る
袋に入れる
「よいしょ!」
ひたすら繰り返す。
しかし――。
「……」
少し経つと、美穂の動きが鈍くなってきた。
「よい……しょ……」
腰を伸ばす。
「……あれ?」
腰に手を当てる。
「痛い」
もう一度、腰を曲げる。
「……痛い」
美穂は気づいた。
「そういえばここ、田んぼじゃないじゃん!」
田んぼの中なら、田んぼの加護で疲れにくい。
でも、ここはただの粘土採取場所。
「うわぁ……」
また粘土を掘る。
「よいしょ……」
腰に負担がかかる。
「よいしょ……」
さらに痛くなる。
そして――。
「あぁー! 腰がぁー!」
美穂の悲鳴が、辺りに響き渡った。
すると――。
「キャー!」
「……!」
別の場所からも悲鳴が聞こえた。
美穂は顔を上げる。
「何事!?」
粘土を掘る手を止め、声のした方向を見る。
「誰かいる!」
美穂は立ち上がった。
腰を押さえながら、悲鳴の聞こえた方へ走り出す。
粘土探しだったはずの小さなお出かけは――。
どうやら、別の出来事に巻き込まれようとしていた。
読んでくれてありがとうございます!
毎日【18時20分】に投稿してます。




