最終話(ラスト)
あー
「半身」
締切前夜。
机の上に並ぶ原稿用紙。
片方は仕上がっている。
片方は白いまま。
篤は一人で描いていた。
ペン先が止まる。
「……違う」
何度描いても、しっくり来ない。
感情はある。
勢いもある。
でも――足りない。
机の端に置かれた一冊。
月刊誌。
読切掲載号。
『リワインドは売り切れ』
二人で描いた最後の原稿。
篤がページをめくる。
ラストシーン。
「過去は買わない」
「今を描く」
小さく笑う。
「かっこつけやがって」
その頃。
雄大も机に向かっていた。
ネーム。
構成は完璧。
起承転結も整っている。
だが――
熱がない。
自分でも分かる。
「……面白くない」
ペンを置く。
視線の先。
机の上に残っている紙。
コンビを組んでいた頃のネーム。
汚い字。
勢いだけの線。
でも、笑ってしまう。
「なんでこんな展開思いつくんだよ…」
夜。
雨。
二人は同時に家を出ていた。
理由はない。
ただ歩いていた。
気づけば同じコンビニの前。
目が合う。
沈黙。
少しだけ気まずい。
篤が先に言う。
「まだ描いてるか」
雄大が頷く。
「お前は」
「描いてる」
間。
雄大が言う。
「月刊読切…」
篤が言う。
「一位だったな」
小さく笑う。
雄大が続ける。
「一人じゃ無理だった」
篤も笑う。
「俺もだ」
雨音だけが響く。
篤がポケットから紙を出す。
破れた原稿。
真ん中から裂けている。
「これ覚えてるか」
雄大が目を見開く。
コンビ解消した日。
勢いで破った原稿。
雄大が言う。
「捨ててなかったのか」
篤が肩をすくめる。
「なんか捨てられなかった」
雄大が静かに言う。
「俺も」
カバンから出す。
もう半分。
裂けた原稿のもう片方。
二人が見合う。
篤が言う。
「くっつけるか」
雄大が少し笑う。
「テープあるぞ」
コンビニで買った透明テープ。
二人で原稿を合わせる。
少しズレてる。
でも――
一枚になる。
篤が言う。
「なあ」
「また描くか」
雄大が答える。
「条件がある」
「何だよ」
「喧嘩はする」
篤が笑う。
「当たり前だ」
雄大も笑う。
「理屈は言う」
「言え」
「でも」
雄大が言う。
「逃げるな」
篤が答える。
「逃げねぇよ」
沈黙。
そして同時に言う。
「組むか」
夜の雨が止む。
雲の隙間から月。
机の上。
裂けて、直した原稿。
その上に新しい紙。
タイトルを書く。
『半身のペンネーム2』
二人でペンを持つ。
夢は一つ。
でも、描き方は違う。
だから――
面白い。
―― 完 ―
ラスト
あー
ありがとう
夢は叶う




