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半身のペンネーム2  作者: マーたん


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39/39

「一枚の中の戦争」

「半身」という言葉には、欠けているという意味と、支え合っているという意味の両方があると思っています。


一人でも描ける。

でも、一人では届かない場所がある。


この物語は、才能と理屈、感情と構成、衝突と共鳴――

そういった“相反するもの”がぶつかりながら、一つの作品を生み出していく過程を描いています。


篤と雄大は決して仲良しではありません。

むしろ何度でもぶつかるし、壊れかける。


それでも、二人でなければ描けないものがある。


そんな関係を、「半身」という形で表現しました。


今回の第二話では、再び組んだ二人が、最初の壁――

“面白さとは何か”に真正面から向き合います。


どうぞ最後まで、お付き合いください。

「一枚の中の戦争」


 


締切三日前。


 


机の上。


 


二人分のペン。


 


インクの匂い。


 


篤がネームを投げる。


 


「ここ、弱い」


 


雄大がすぐに拾う。


 


「いや、伏線だ」


 


「伏線なら回収が甘い」


 


「まだ途中だろ」


 


「途中でも伝わるだろ普通」


 


 


沈黙。


 


空気が少し張る。


 


 


雄大が言う。


 


「……お前、変わってないな」


 


 


篤が返す。


 


「お前もな」


 


 


また沈黙。


 


 


だが――


 


 


ペンは止まらない。


 


 


 


夜。


 


作業机。


 


 


雄大が構成を直す。


 


コマ割りを削る。


 


台詞を減らす。


 


 


「……これでどうだ」


 


 


篤が見る。


 


 


数秒。


 


 


「いい」


 


 


一言。


 


 


雄大が笑う。


 


 


「だろ」


 


 


篤がペンを取る。


 


 


「じゃあ次、俺が壊す」


 


 


 


描き直されるキャラ。


 


表情が変わる。


 


線が荒くなる。


 


 


雄大が思わず言う。


 


「感情寄せすぎだろ」


 


 


篤が言う。


 


「ここ、爆発させるとこだろ」


 


 


雄大が腕を組む。


 


 


「……じゃあ前振り足す」


 


 


「頼む」


 


 


 


――ぶつかる。


 


――混ざる。


 


 


 


締切前日。


 


 


床に散らばる紙。


 


ゴミ箱は満杯。


 


 


篤が頭を抱える。


 


 


「ラスト……弱ぇ」


 


 


雄大も黙る。


 


 


分かっている。


 


 


ここで決まる。


 


 


作品が“残る”かどうか。


 


 


 


長い沈黙。


 


 


 


雄大がぽつりと言う。


 


 


「……覚えてるか」


 


 


「何を」


 


 


「最初に組んだ時のネタ」


 


 


篤が少し考える。


 


 


「ああ……あの、くだらねぇやつか」


 


 


雄大が笑う。


 


 


「くだらなかったな」


 


 


篤も笑う。


 


 


「でも笑った」


 


 


 


目が合う。


 


 


 


雄大が言う。


 


 


「原点、そこじゃね?」


 


 


 


篤がペンを持つ。


 


 


「……だな」


 


 


 


紙に描く。


 


 


一コマ。


 


 


静かなシーン。


 


 


誰も叫ばない。


 


 


誰も死なない。


 


 


ただ――


 


 


“笑う”。


 


 


 


雄大が息を呑む。


 


 


「……これだ」


 


 


篤が頷く。


 


 


「これだな」


 


 


 


二人で最後のページを仕上げる。


 


 


 


締切当日。


 


 


原稿を送る。


 


 


送信ボタン。


 


 


指が止まる。


 


 


篤が言う。


 


「押すぞ」


 


 


雄大が言う。


 


「押せ」


 


 


 


クリック。


 


 


 


送信完了。


 


 


 


沈黙。


 


 


 


そのあと――


 


 


同時に笑う。


 


 


 


「疲れた……」


 


 


「死ぬ……」


 


 


 


床に倒れ込む。


 


 


 


天井を見る。


 


 


 


篤が言う。


 


 


「なあ」


 


 


「ん」


 


 


「次、何描く」


 


 


 


雄大が少し考えて――


 


 


笑う。


 


 


「もっとくだらないやつ」


 


 


 


篤が笑う。


 


 


「いいな、それ」


 


 


 


窓の外。


 


 


朝日。


 


 


 


二人の机の上。


 


 


一枚の原稿。


 


 


もう――


 


裂けていない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


第二話は「一枚の中の戦争」というタイトルの通り、

二人の中で起きている衝突そのものを描きました。


創作において、「正しさ」と「面白さ」は必ずしも一致しません。

理屈で完璧でも心が動かないこともあるし、

勢いだけでも成立しないことがある。


篤と雄大は、その狭間でもがき続けています。


そして今回、彼らが辿り着いた答えは――

“原点に戻ること”。


くだらないけど笑える。

理屈じゃないけど心に残る。


そんなシンプルな強さが、きっと作品の核になるのだと思います。


まだ物語は始まったばかりです。

掲載結果、周囲の評価、新たな出会い――

ここからさらに、二人の「半身」は試されていきます。


この先も見届けていただけたら嬉しいです。

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