第三十二話 「アニメ化」
…
速報は、昼休みに回った。
教室のざわめき。
誰かのスマホから声が上がる。
「うわ、マジかよ」
「すげぇ……」
雄大は何気なく画面を覗いた。
そこに載っていた見出し。
週刊連載『中直』、待望のアニメ化決定!
息が止まる。
元同じ学校。
元同級生。
そして――
アンケート一位常連。
ライバル。
篤も、別の場所で同じニュースを見ていた。
編集部。
黒瀬が無言でスマホを置く。
「来たな」
篤は黙っている。
画面には特報ビジュアル。
動き出すキャラクター。
声優決定。
放送枠。
全部が一段上の世界。
黒瀬が言う。
「悔しいか」
篤は一瞬だけ笑う。
「当たり前だろ」
黒瀬は腕を組む。
「アニメ化は通過点だ」
「だが」
「一度決まれば、作品は加速する」
単行本部数増。
メディア露出。
世間の認知。
篤は静かに言う。
「遠く行ったな」
黒瀬が即答する。
「いや」
「先に行かれただけだ」
放課後。
校門前。
雄大と篤が顔を合わせる。
言わなくても分かる。
「見たか」
「見た」
沈黙。
雄大が言う。
「すげぇな」
篤は頷く。
「すげぇ」
「正直」
雄大は苦笑する。
「羨ましい」
篤は目を細める。
「俺もだ」
アニメ。
それは漫画家にとって、一つの頂点。
動く。
喋る。
全国放送。
雄大がぽつりと言う。
「俺ら、三週一位で浮かれてたな」
篤が小さく笑う。
「スケール違いすぎる」
空気が重くなる。
だがその奥で、何かが燃えていた。
篤が言う。
「なあ」
「次の目標、できたな」
雄大が視線を上げる。
「アニメ化」
短い言葉。
だが重い。
雄大が深く息を吸う。
「……取るか」
篤が笑う。
「取る」
コンビは解消した。
だが目標は同じ。
ライバルが先に行った。
悔しい。
羨ましい。
腹が立つ。
だが――
「燃えるだろ?」
篤の目が光る。
雄大も、静かに笑った。
物語はまだ途中。
アニメ化は夢じゃない。
目標だ。
高校三年生。
受験もある。
未来もある。
だが今は――
ただ一つ。
「絶対、追いつく」
ライバルの背中は、はっきりと見えていた。
…




