第二十六話 「まさかの一位」
かー
ドリーム館・編集部。
朝。
異様なざわめき。
「……なんだ……?」
雄大が違和感に気づく。
視線。
視線。
やたら刺さる。
篤は気にせず缶コーヒーを開ける。
「新人が珍しいだけだろ」
その時。
編集部の奥から足音。
早い。
黒瀬真一だった。
だが――様子がおかしい。
「……おい」
低い声。
机に一枚の紙を叩きつける。
「見ろ」
雄大が恐る恐る視線を落とす。
月刊『月の輪』
読者アンケート速報
そして。
そこに記された順位。
一位
「…………は?」
理解が拒否する。
「え……?」
「……え……?」
三秒。
完全停止。
「はぁ!?」
雄大の絶叫。
「ちょっと待ってください!!」
「なにこれ!!」
「バグ!?」
黒瀬は真顔だった。
「現実だ」
篤が紙をひったくる。
目で追う。
固まる。
「……マジかよ……」
初めて見せる素の反応。
編集部の空気が完全に異常だった。
ざわめきが止まらない。
「新人だろ……?」
「読み切りだよな……?」
「初掲載で……?」
雄大の頭が追いつかない。
「いやいやいやいや……」
「一位って……」
「看板作家押さえて……?」
黒瀬が深く息を吐く。
「正直」
珍しく本音の顔。
「俺も驚いてる」
篤がニヤリと笑う。
徐々に実感が滲む。
「だから言っただろ」
紙を軽く叩く。
「やれるって」
雄大がまだ混乱している。
「いや……でも……」
「そんな手応え……」
黒瀬が遮る。
「読者は理屈で読まない」
静かな断言。
「刺さったんだよ」
「真正面から」
「喪失」
あのテーマ。
「キャラ」
あの設計。
「引き」
あの一話目。
全てが噛み合った結果。
編集部の別の編集者が口を挟む。
「黒瀬」
「これ……連載会議直行案件だぞ……」
空気が変わる。
雄大の心臓が跳ねる。
篤の目が光る。
黒瀬がゆっくり笑う。
「当然だ」
即答だった。
「一位だぞ?」
「検討じゃない」
「確定候補だ」
雄大が呟く。
信じられないという声。
「……人生ってこんな急展開あるのかよ……」
篤が笑う。
「漫画みたいだな」
黒瀬がニヤリと笑う。
「違う」
紙を指で叩く。
「ここは漫画の世界だ」
だが。
次の言葉は冷酷だった。
「浮かれるなよ」
空気が引き締まる。
「一位はスタート地点だ」
「維持できなきゃ意味がない」
週刊よりも残酷な真実。
「月刊読者は気まぐれだ」
「次で落ちれば終わり」
篤の笑みが深くなる。
「上等だ」
雄大も小さく息を吐く。
「……やってやるよ……」
まさかの一位。
奇跡か。
必然か。
だが一つだけ確かなこと。
戦いは終わらない。
むしろ――
ここからが本当の地獄だった。
きー




