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半身のペンネーム2  作者: マーたん


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第二十話 ドリーム館の女/暴かれる因縁

ドリーム館?

ドリーム館編集部。


業界でも異質な存在。


自由主義。


尖った作家の受け皿。


そして――


この雑誌の最大のライバル。


 


「……マジで来たのか俺たち……」


 


雄大がビルを見上げる。


巨大な看板。


圧倒的な威圧感。


 


篤は一切迷わず入口へ向かう。


 


「当たり前だろ」


 


「選択肢は多い方がいい」


 


「いや普通アポとか――」


 


「取ってねぇ」


 


「はぁ!?」


 


暴走。


いつも通りだった。


 


受付を抜けた瞬間。


編集部の空気が変わる。


 


ざわつき。


視線。


明らかな異物を見る目。


 


「……週間NETLEEKの新人……?」


 


「なんでここに……」


 


業界は狭い。


噂は早い。


 


その奥。


 


「通しなさい」


 


低く、よく通る声。


 


空気が裂ける。


 


編集長。


ドリーム館の頂点。


 


「……編集長直々……?」


 


周囲の編集者たちがざわめく。


異例中の異例。


 


篤が不敵に笑う。


 


「話が早ぇな」


 


雄大は生きた心地がしない。


 


編集長室。


重厚な扉。


 


「失礼します……」


 


足を踏み入れた瞬間。


 


「君たちか」


 


鋭い視線。


圧。


まさに猛獣。


 


「よく来た」


 


意外な言葉。


 


「読み切りは読んだ」


 


雄大の鼓動が跳ねる。


 


「……あ……ありがとうございます……」


 


編集長はニヤリと笑う。


 


「欲しい」


 


沈黙。


 


「……え?」


 


「うちで描け」


 


直球だった。


 


雄大の思考が停止する。


篤の目が細くなる。


 


「引き抜きかよ」


 


「交渉だ」


 


編集長は即答した。


 


「才能は奪い合うものだ」


 


その時。


 


「編集長」


 


横から声が入る。


 


ドリーム館の編集者。


焦った顔。


 


「それは……さすがに……」


 


「向こうの編集部との問題が――」


 


「黙れ」


 


一喝。


空気が凍る。


 


「才能に遠慮はいらん」


 


絶対的な支配力。


 


そして。


 


「……あら」


 


別の声。


 


背筋が凍る。


 


「懐かしい顔ね」


 


振り向いた瞬間。


 


雄大が固まる。


篤の表情が変わる。


 


「……誰だよ……」


 


そこに立っていたのは――


川島由佳。


 


冷たい笑み。


露骨な敵意。


 


「元・週間NETLEEK編集者」


 


編集部の空気がざわめく。


 


「色々あってね」


 


意味深な言い方。


 


「……最悪……」


 


雄大の本音が漏れる。


 


由佳が鼻で笑う。


 


「相変わらず甘そうな顔」


 


明らかな挑発。


 


「あなた達」


 


視線が突き刺さる。


 


「向こうでも問題起こしたんでしょ?」


 


篤の目が鋭くなる。


 


「ケンカ売ってんのか」


 


「事実確認よ」


 


一切怯まない。


 


「ドリーム館は遊び場じゃない」


 


編集長が興味深そうに眺めている。


 


「面白い」


 


呟く。


 


「続けろ」


 


場がさらに不穏になる。


 


由佳が笑う。


 


「忠告してあげる」


 


冷酷な声。


 


「この業界」


 


「居場所は簡単に消えるわよ」


 


完全な敵宣言。


 


篤が笑う。


危険な笑み。


 


「上等だ」


 


雄大の背筋に冷たい汗。


 


ドリーム館。


ライバル雑誌。


 


そして――


最悪の女。


 


新たな火種が、確実に生まれていた。



編集長室の空気は、すでに異様だった。


新人作家でも、持ち込みでもない。


視線の中心は――


編集者同士。


 


「久しぶりね、八島歩」


 


川島由佳の声は甘い。


だが、毒が滲んでいる。


 


歩の表情が変わる。


ほんの僅か。


それだけで異常だと分かった。


 


「……あなたがここにいるとは思いませんでした」


 


感情を押し殺した声。


明らかな緊張。


 


「そりゃそうでしょ」


 


由佳は肩をすくめる。


 


「あなたに追い出されたんだから」


 


沈黙。


 


雄大が目を見開く。


 


「……え?」


 


篤も眉をひそめる。


 


歩が即座に否定する。


 


「事実を歪めないでください」


 


「歪めてないわよ」


 


即答。


一切の躊躇なし。


 


「会議、覚えてる?」


 


編集長が興味深そうに視線を細める。


完全に観客だった。


 


「新人連載枠争奪」


 


空気が凍る。


 


歩の拳がわずかに握られる。


 


「あなたの担当作家」


 


由佳の笑みが深まる。


 


「私の担当作家に勝った」


 


「……」


 


「違う?」


 


歩は答えない。


それが答えだった。


 


雄大が小さく呟く。


 


「……そんな世界なのかよ……」


 


由佳の視線が鋭くなる。


 


「そんな世界よ」


 


冷酷な断言。


 


「あの時」


 


声色が変わる。


怒りが混じる。


 


「私の作家は切られた」


 


「未来を潰された」


 


歩が低く返す。


 


「実力差です」


 


「は?」


 


「数字が全てだった」


 


「編集の情では覆らない」


 


由佳の目が険しくなる。


 


「綺麗事言うようになったのね」


 


「昔のあなたは違った」


 


歩の視線が揺れる。


ほんの一瞬。


 


「……何が言いたいんですか」


 


由佳が一歩踏み込む。


 


「あなた」


 


「昔はもっと冷酷だったじゃない」


 


室内が静まり返る。


 


「勝つためなら何でもする編集者」


 


「それが八島歩だった」


 


雄大が言葉を失う。


 


篤の視線が歩へ向く。


 


歩は沈黙する。


否定しない。


 


それが何より雄弁だった。


 


「でもね」


 


由佳が笑う。


 


「今のあなた、甘い」


 


「作家に肩入れしすぎ」


 


「感情移入しすぎ」


 


鋭い断罪。


 


「それじゃ勝てない」


 


歩の目が細くなる。


 


「……変わっただけです」


 


「成長ではなく?」


 


「進化です」


 


静かな火花。


 


由佳の笑みが消える。


 


「相変わらず嫌い」


 


本音だった。


 


「あなたみたいな編集者が一番タチ悪い」


 


編集長が小さく笑う。


 


「いいねぇ……」


 


完全に楽しんでいる。


 


「続けたまえ」


 


歩の声が低くなる。


 


「あなたは変わらなかった」


 


由佳の目が鋭く光る。


 


「当然でしょ」


 


「この世界は変わらないもの」


 


「夢じゃ食えない」


 


「情じゃ勝てない」


 


冷徹な現実論。


 


そして最後に。


 


「あなたはまた負ける」


 


言い切った。


 


「その新人たちと一緒にね」


 


雄大の背筋が凍る。


 


篤がニヤリと笑う。


 


「面白ぇじゃん」


 


完全に火がついた顔。


 


歩は静かに言い返す。


 


「それはどうでしょう」


 


視線は揺るがない。


 


「今度は」


 


決定的な一言。


 


「私の作家が勝ちます」


 


空気が張り裂ける。


 


編集者の戦争。


過去の遺恨。


 


そして――


新人二人を巻き込む新たな戦場。


 


ドリーム館。


ここもまた、地獄だった。

元編集者??

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