第十七話 審判の日
‥
掲載号発売日。
朝。
コンビニ。
「……置いてある」
雄大の声はかすれていた。
棚の中央。
見慣れた雑誌。
自分たちの作品が載っている号。
篤は無言で一冊掴む。
表紙も特集も目に入らない。
指が微かに震えていた。
ページをめくる。
目次。
自分たちのタイトル。
確かに、そこにある。
「……マジで載ってる……」
現実感がない。
夢のように軽く、異様に重い。
篤がページを開く。
インクの匂い。
紙の手触り。
印刷された線。
自分たちの漫画。
「……」
言葉が出ない。
雄大も黙り込む。
ただ、食い入るように見つめる。
「変な感じだな……」
篤がぽつりと呟く。
「描いた時より下手に見える」
「分かる……」
雄大も苦笑する。
「全部直したくなる」
新人あるあるだった。
だが問題はそこではない。
「問題は……」
雄大が視線を落とす。
「アンケート……」
沈黙。
読者の評価。
それが全て。
数日後。
編集部。
空気が重い。
異様に重い。
歩が資料を持って現れる。
表情は読めない。
「……出ました」
心臓が跳ねる。
篤も雄大も無言。
「アンケート順位」
紙が机に置かれる。
二人の視線が落ちる。
数字。
一瞬、理解できない。
「……え?」
雄大が固まる。
篤も言葉を失う。
「……上位……?」
信じられない順位。
新人読み切りとしては異例。
明らかな成功ライン。
歩が腕を組む。
「編集部でも驚いています」
淡々とした声。
だが、わずかな熱が混じっていた。
「賛否は激しいですが」
「刺さった読者が多い」
篤がゆっくり顔を上げる。
「……マジかよ……」
現実とは思えない。
雄大がまだ信じられない表情で数字を見る。
「そんな……」
歩が続ける。
「ただし」
空気が引き締まる。
「安定評価ではありません」
「熱狂型です」
「ハマる層には異常に強い」
「拒否反応も強い」
「扱いが難しいタイプ」
篤がニヤリと笑う。
「最高じゃねぇか」
歩が即座に返す。
「編集泣かせです」
「でも」
一拍置いて言う。
「武器になります」
雄大が息を呑む。
「……ということは……」
歩は真っ直ぐ二人を見る。
「次を描いてください」
「連載会議にかけます」
時間が止まる。
篤が目を見開く。
雄大の思考が完全に停止する。
「……え?」
「チャンスです」
歩の声は静かだった。
だが確信に満ちていた。
「ここからが本当の地獄ですよ」
篤が笑う。
「上等だ」
雄大も、ゆっくりと笑った。
恐怖と興奮が入り混じった顔。
夢ではない。
現実が、動き出していた。
‥




