第8話 ベルという人間
私とリベルはこの一夜で仲間になった。
この世界で初めての仲間、それと同時に新たな問題が私たちを襲った。
『お前名前ないからわかりずらいな…』
そう、私の名前がないっていうことに……
微妙に見えるかもしれないけれど、私たちにとっては致命的な点だった…
『確かに……どうしよう、名前なんて思いつかないよ…』
しばらく考えたが思いつかない。
『お前…の名前か、この世界や自分自身を知りたがってるから"知りたガール"とかにすればいいんじゃないか?』
…沈黙が走る。
この一夜で何回沈黙が走ったのだろう。
『………笑うとこだぞ…』
『えっ…』
おそらくリベルは和むためにボケてくれたのだろう。
この時私はリベルはただただ少し怖い人物だと思っていた。でも私を助けてくれた事、和むためにボケてくれた事、リベルの不器用ながらの優しさを私は感じ取った。
『……ベルなんてどうだ?』
『ベル…?』
『俺はあまり深く考えたくない人間だ。俺のリベルからベルだけを取ったんだよ。』
"ベル"…その名前はリベルから取った名前。
正直適当だとは思ったけれど、リベルは私のために考えてはくれたらしい。
『…ベル、うん、この名前にする』
『…………え、ほんとにそれにするのか?俺適当に考えたんだぞ?』
『うん、適当だったとしても、貴方が私のために考えてくれたことには変わりはないから。』
私はこの偽りの世界で…ベルという人間として生きていくことを決めた。
『まぁ…お前がいいなら』
『……名前も決まった。これでここから出る準備は整ったな。ベル、行けるか?』
『うん』
そうして私たちはこの出会った場を去り、遺跡の外へ出た。
そこには…
『ここが、偽りの国…?』
辺り一面に広がる、草原、登り行く朝日が大地を照らしている。
向こうには川も見え、山など自然が豊かだった。
『偽りの国…危険な世界だが……見た目はまぁまぁいいだろ?』
私はその景色に見惚れた。
『おい、もうそろそろ行くぞ。行かなきゃいけねぇところがあるんだ。』
『行かなきゃいけないところ…?』
私とリベルは歩きながら話し出した。
『デシリア村っていう、小さな村だ。俺はそこの医者の元で働いててな、主に薬草とか、そういうのを集めてんだ。』
『確かに……あの化け物と戦う時…素材集め…って言ってた……そういえば…ロスト?って言ってたよね…?
怪物のことを言ってたの?』
『ん?あぁ…そうか知らないよな。ロストっていうのは偽りの国で生息する人のならざるモノだ。様々な個体がいるんだが…共通して人を襲う』
ここで私はロストとは何か、なぜリベルが素材集めをしていたのかという謎が自然と解けた。
『リベルはロストが怖くないの?』
『ふっ……あんな奴らが怖くないのかって?俺はロストよりもやべぇ奴を知ってんだ。』
『ロストよりやばい奴…?強いの?怖いの?』
『…お前は知らなくていいことだ。』
『…うん。』
(ロストよりやばい奴…なんだろう?怒るのが怖いおじさん?まぁわからないけど…この国にはいろんな人たちがいるんだ…)
『あ、あとお前に言わなくちゃいけねぇことがあんだ……村の話なんだが…』
『村の話?』
リベルの声が真剣になる。
『いいか…?村に入ったら…いや、この世界の住民には絶対に俺が罪人だっていうこと…お前の紋章のことは口が裂けても言うな』
リベルは真剣な表情でそう私に言った。
『う、うん…?もし…言ったらどうなるの?』
『…いいか?偽りの国の住民のほとんどは後悔によって堕ちた"悔人だ。そしてこの国は悔人以外の人間、つまり罪人の存在を許していない。』
『お前の紋章にも罪人の一部が混じってる、異質な存在として見られる…だからお前も罪人の1人だと思っていた方がいい。罪人である俺らが村の奴らにバレたりでもしたら…………大体はわかったか?』
『う……うん…』
この美しい景色の中で、再び残酷な現実を突きつけられた。私たち罪人は、この国では受け入れられない。
『俺はフードを被って首筋を隠せるが……お前の場合はどうするか…?』
そういうとリベルは持ち物を漁り始めた。
『チッ…何かないか…?………あ』
リベルは何かを見つけた。
『……まさかアイツがくれた奴がここで役立つとはな……』
リベルが取り出したのは赤いマフラーだった。
少しボロボロだが、着用するにおいて問題はなさそうだ。
『…これを今からつけとけ。罪人…お前の場合は異質な存在だってバレたらタダじゃ済まないからな…』
私はマフラーをつける。
罪人の人たちはこうしないと死ぬのか、と思いながらも私とリベルは村を目指した。




