第4話 黒く濁った恐怖
男は言動的に怪物と戦おうとしていた。
突然の状況、理解が追いつかない。
男は、怪物から目を逸らさなかった。
何をするつもりなのか。
考えるより先に、身体が震えた。
目の前の怪物から感じる殺気。
近づかれれば、きっと殺される。
なのに、男から感じるものは、それとは違った。
怖い。
ただ怖いんじゃない。
言葉では表せない、黒く濁ったような恐怖だった。
そんなことを感じていた、次の瞬間_____
《ぎ"ゃあぁあぁあぁぁ"!!》
痛々しい叫びが響いた。
私は驚いたと共に、戦闘が開始したのだとわかった。
倒れた棚を少し上げ、隙間から状況を確認した。
謎の男は怪物の横腹に一撃を入れていた。
謎の男は手にナタを持っている。
怪物は顔が歪み、苦しさを物語っていた。
《…■■■■■■"!!》
怪物が男へと叫んだ、その大きすぎる叫びに私は思わず耳を塞いだ。
『ぎゃあぎゃあさっきからうっせぇんだよ!デカブツァ!!』
男が壁を蹴り勢いと共に怪物へと突っ込む。
だが怪物はそれを予測し、腕を男へと振り払いカウンターを放った。
『カウンターしてんのがお前だけだとは思うなよ?』
男は怪物の腕をつかみ回転するように身を捻り攻撃を避けた。
『死闘においてパターンを考えない阿呆はすぐに死ぬ、こうみたいにな』
男は怪物の首あたりから下半身へ一刀両断した。
怪物は重傷を負い、壁へもたれ込んだ。
私が驚いたのはこの男が勝ったことでもあるけれど、
怪物が重傷を負ったのに対し、目の前の男は傷一つもなくその場に立ち尽くしていたこと。
私はこの時、一つの疑問と恐怖が思い浮かんだ。
『雑魚だったな、暇潰し…までにもいかなかったな』
この男は味方なのか…?
もし敵ならば…さっきの怪物より格上の存在…?
『…おい、そこにいるお前……出てこい』
(え…っ?)
私は思わず思考が止まってしまう。
男は私に対して言ったのだろうか……?
隠れている私を戦闘中に見つけるなんて不可能だ…
『そこの倒れてる棚の下にいるんだろ?呼吸音、鼓動音からして1人だな。』
呼吸音、鼓動音が聞こえている…?
常人がそんな超人的なことが出来るのか…?
居場所はバレている……
今ここでこの場所から出ても大丈夫なのだろうか…?
目の前の男は本当に味方なのか…?
『音からして人間だろ?なんで隠れる必要がある?』
言動的に…殺すつもりはなさそう…?
じゃあ…出ても大丈夫?
私は恐る恐るその場所から身を出し、男の前に現れた。
『……女、子供か?』
男の見た目は黒いズボン、黒いジャケット、年齢的に20代くらい…だろうか?
腰には先程のナタが装備されていた。
『ここで何してる?宝探しでもしてたか?あんのは使い物にならねぇ物だらけだぞ』
『わ……私は………』
言葉が出てこない。
気がついたらここにいた、それで状況が整理できてない……これも理由の一つなんだろうけど…
やっぱり感じる。
先程から感じるこの黒い濁ったような恐怖が……
震えが止まらない。
『………わたしもわからない…』
こう答えるしかなかった。
『………その傷、ロストにやられたか?』
『ロスト…?』
ロストとはなんだろう…?私は意味がわからなかった。
『……そうか、ロストをしらねぇって事は………
お前、ついさっき堕ちてきたんだな?』
『堕ちてきた…?どういうこと?わからない……
ここはどこなの……?』
『……ここは暗くて上手く見えねぇ。中庭で膝の手当てをしてやる。そこでその質問に答えてやる。
ついてこい』
男はそう言うと背中を向け、歩き始めた。
私はこの時彼が味方かわからなかったが、今は信じるしかなかった。
今はとにかく、同じ人間に会いたかったから。




