第3話 迫り来る巨影
私はその場から動くことができなかった。
目の前の暗闇には"それ"がいるというのに。
『あ………あっ……"』
私が動けない間にも異形の怪物はゆっくりと近づいてくる。
《……ゆ"…る……な"い…》
動け動けと足にと言い聞かせる。
再び怪物を見ると憎しみと悲しみが混ざったような目でこちらを見てくる。
『……誰か…"…助けて……!!』
私は思わず恐怖で涙が流れた。
だが泣いたからと言って襲ってくる気配は消えなかった。
《ゆ"るざない"!!ゆ"るざない!!》
怪物はそう叫び、私へ襲いかかった。
拳が私めがけて飛んでくる。
『……!!』
間一髪で足が動き攻撃を交わした。
だが勢いのあまり転んでしまう、膝を擦りむいたが立ち止まっている訳には行かなかった。
まだあの怪物は私を逃してくれない。
『外……外に出れば誰か…!!』
私はこの時パニックになり、外へ出ることにした。
私は出口を探しひたすら遺跡内を走った。
(出口…!出口はどこなの…!?)
背後からは足音とそれに伴い壁が崩落する音が響いた。
怪物は壁を壊しながらなお私を追ってきている。
追いつかれるのも時間の問題、だが出口は見つからない。
おまけに膝を擦りむいているので走るたびにヒリヒリと痛む。
(どうしよう…このままじゃ追いつかれる…!!
他に出れる方法は……!!)
必死に考えを巡らせ、色々な考えを出す。
出るではなくこの状況から抜け出すという案で隠れてやり過ごすという考えも思い浮かんだ。
でも他に方法が思いつかない、隠れるしかなかった
次の角を曲がり、近くの傾いた棚の下へ隠れた。
口に手を抑え息を殺す。
跳ね上がる鼓動を必死で抑える。
(大丈夫……大丈夫……大丈夫…きっと見つからない…)
その時、重い足音が近くで鳴った。
"あれ"が部屋に入ってきた。
さらに鼓動が早くなる、鼓動の音でバレないか心配になる。
私は見つからないよう祈るしかなかった。
(お願い……"!!こっちへ来ないで……!!)
怪物もこの部屋を怪しんだのか、すぐには通過せずゆっくりと探し始めた。
その時、瓦礫を退かす音が響いた。
隅々まで探すつもりなんだろう。
どんどん怪物の足音は近づいてくる。
怪物から隠れている十数秒がとても長く感じた。
《ゴトッ……》
今どかされたのは位置的にこの棚の目の前の瓦礫か何かだろうか?
(…次探しに来るのは………"ここ"…?)
怪物の足音が近づいてくる。
そして棚の前で足音が止まった。
(……嫌………嫌…!!)
棚が掴まれ持ち上げられそうになる。
(やめて………!嫌…………!!)
私は終わりを悟った。
その時だった。
《タッ……タッ………》
怪物とは違う足音が近づいてきた。
それに怪物も気づいたのか退かす手が止まった。
(誰か……来た………?)
『……古びた遺跡だが随分なデカブツがいるもんだ。
素材集めで来たつもりだが…意外な収穫もあるもんだなぁ…』
知らない声、男性の声だった。
怪物に向けて話している?
意外と声は近かった。
『…なぁ、俺素材集めばっかで飽きてたところなんだよ…それに最近やりあえてなくてなぁ…収穫が素材だけって悲しいだろ?』
《………オマ"エ……こ"ろス…"》
怪物の意識はどうやら私ではなく謎の男性へ向いたようだ。
だが何もできないので隠れ続けるしかない。
『へぇ?俺の誘いに乗ってくれるのか?化け物のクセに見事なもんだ…"殺す"のには惜しいくらいだ』
(…え?まさか…戦おうとしてる…?)
謎の男は怪物と戦おうとしていた。
『殺すのは惜しいが…殺らなかったら今度はコッチがやられっからよぉ……』
『お前殺すだぁ…?いいぜやってみろよ!!お前の手で俺を殺してみろ!!』
これから、狂気に塗れた殺し合いが始まる。




