第17話 狂乱の前兆
どうやらこの村では…次々と人がおかしくなっているらしい。
私にもその症状が出ていて、早くしないと手遅れになる。
私たちはすぐに教会へ向かう準備をした。
正直紋章についてはどうしようもできないのでこの村に来たときのようにマフラーを巻き、外に出る。
すると信徒さんが待ってくれていた。
『あれ…?もしかしてその子が例の子ですか?』
『あ……はい………』
すると信徒は私を見つめる。
まさか異質な存在だとバレた……?
『……おかしいですね…症状が出た場合、司祭様に診てもらわないと正気には戻らないはず……自身の力で解決できる問題じゃないんですよ…』
どうやらバレてなかった。
信徒が見つめていたのは私が狂っていないからだった。
『ベルはでも確かに症状が出てたんだよね?リベル。』
『間違いねぇ……急に笑い出す、怒り狂う、扉を連呼する、全て当てはまってる。』
なんだろう……
何かが引っかかる……
何か見落としてるような……
扉………どこかで見たような気がする、普通の扉じゃない、特別な……禍々しいような扉を……
『とりあえず危険なことには変わりありません!
早く教会へ向かいましょう!!』
一同は教会へ向かう。
村の中央には広場がある、その広場と教会は隣接している。
そのため教会の前には人だかりが出来ていた。
(人が集まってる………)
もしかしてこの人たちも症状が出た人……?
いや、その付き添い…?
どちらにしろすでに狂った人間は数十人いると言ったところか……
『えっと…君!早く中へ!司祭様に診てもらいましょう!!』
信徒は私へ向けてそう言う。
私に続き2人が入ろうとするが……
『あ、一般の方は教会には立ち入れません…!!』
信徒がロウワーさんの立ち入りを止めた。
『え?なぜだ…!?私は医者だ……知識があるから力にはなれる!』
ロウワーさんはそう言う。
医者だからこそ、患者の状態を確認するために入れてもいいはずなのに……
そもそも教会に集まらずにロウワーさんの診察所……医者の所へ行けばよかったのでは?
先程は場に流されてしまったが…………
そもそもなぜ教会に……?
『通してください!!通ります!!』
すると知らない女性の声が響く。
声のした方向を見ると別の信徒が2人の村人を連れてきていた。
もう一方は
『タクト"!タクト"!!』
名前を呼んでいる女性。
そのもう一方は……
『い"ぃい"ぃ"れれ"れれれな"な"ななな"』
狂い、可笑しく、変わり果てた男だった。
辺りにいた村人はその男を見てゾッとする。
『…な、また人が……!!…………すみません!!
今来た男性を優先してもよろしいですか…!!貴方は症状が今出ておらず……その……"』
私を連れてきた信徒はそう言った。
今来た男性を優先した方が良いと判断したのだ。
実際、私は狂ったがなんとかなっている……
『……私はまだ大丈夫…彼を治してあげてください…』
『は!?』
2人は私の返事に驚いていた。
『君……!ありがとう…ありがとう……!!』
付き添いの女性は私へ涙を流しながら感謝した。
私は別にその2人に恨みや嫌悪などは抱いていなかった。
ただただ治ってほしいと思うばかり。
『空きが出たらすぐに案内しますので!!』
信徒は私にそう言い、中へ入って行った。
『ちょっとベル…!!何して…!!君だってさっき狂っていたんだよ…!?』
ロウワーさんが私に大きい声で言った。
『もしまた狂ったらどうする……?お前がどうやって落ち着いたのかはわからねぇが……次はもうねぇかもしれないんだぞ…?』
リベルもそう心配するが……
優先せざるを得なかった。
他者を優先してしまった。他者を助けたかったから。
『……助けたかったの。ただそれだけ、私自身が自分の命より彼を優先した方がいいってそう言ってる。』
『…えぇ……!?』
(ベル……君にとって他者をどう思ってるかは知らないけど……人間っていうのはいざ危機に落ちた時、綺麗事すら言えないどころか、考えられることもできない……君は狂って手遅れになりそうな状況であるのに……君自身に宿る純粋なる助けたい気持ち…、それが勝っているという訳か……)
私たちは教会の前で順番が来るのを待つことに。
『……ベル、すぐ診てもらっても大丈夫なように整理しないかい?本当に違和感はないのかい…?』
『違和感……?』
(どうだろう……寝ていた時、特に何も……)
その時、ベルの脳内に曖昧だがあの奇妙な夢の光景が映る。
それと共に、扉に対しての違和感も脳裏によぎった。
『………寝ていた時、奇妙な夢を見た。何もない空間に、封鎖された"扉"がぽつんとあった夢…』
私は夢の内容をロウワーさんに話した。
『扉……の夢…?扉って、症状にある扉を連呼する、にまさか関係があるのか…?ただの奇跡?偶然か…?』
『そういや………』
リベルが口を開く。
何か思い出したのだろうか?
『ベルが発狂する前……下向いてなんかボソボソ喋ってたんだよ……んで、この行動見覚えねぇか…?』
その言葉に2人はハッと気づく。
どうやら2人ともリベルの言っている意味を理解したようだった。
『あの謎の男……?』
ロウワーさんが恐る恐る声に出す。
『確かに……私が起きた時、男がくれた謎のネックレスがひとりでに震えていた……この時点でただのネックレスじゃない…やっぱり呪物……?私を襲おうとした……?』
『あの野郎……核心とか言ってたが結局はベルへ攻撃を仕掛ける為か…!!ならもうここでその呪物ぶっ壊そうぜ』
リベルはそう提案する。
確かに……こうして見ると謎の男が犯人……?
でもなんだろう……
彼のせいではない気がする……
『あ、そういえばその人……私の夢に出てきた…
確か……扉を開けようとした私の手足を斬って……』
『いやもうそれ敵意あるんじゃない………?もうほぼクロだよそれ……』
『……じゃあ彼が犯人なら…なんで私だけではなく私以外の人間もおかしくなってるの……?』
その言葉に全員が固まる。
『確かに……いやでもあの男がベルだけじゃなく全員に敵意を向けた……?だとしてもなんで1番敵対するべきベルが落ち着いた…?辻褄が合わない……』
(……確か、あの男は私の手足を斬った後……こっちを向いてこう言ってた……『他者を救い……』って、
何かを伝えようとしてたのかな……?私の手足を斬って何がしたかった…?)
謎は深まるばかり……
一体この狂乱の原因はなんなのか……
あの男は……何がしたかったのだろうか……?




