第15話 神恩が消えた日
謎の男は私に小さいナイフ?のネックレスを残して消えてしまった。
だが小さいナイフと言っても指先ナイフのような超小型ナイフだった。
年季はすごい入っていて、ナイフを出そうとしても固く出しづらかった。
『ナイフ……?なんでこんなものを私に渡したんだろう……?』
『さぁ…?これがあの男の言う、不屈の憎悪の核心と何か関係しているのかな…?』
疑問は深まるばかりだ……
『ねぇ、あの男の人……死んじゃったの…?あんな消え方……なんだったんだろう……?』
『うーん……私が今まで聞いた話だと、今回のように干渉後、悔想領域を開いた張本人が消える……のようなケースはあまりない。もしかしたら…幽霊とかそういう系の類に近いのかもしれないね。基本的には消えずに肉体が残るケースも全然確認されてるんだ。』
私はそれを聞いてゾッとする……
まさか幽霊……亡霊か何かだったのだろうか…?
『え…?あの人……つまりもう亡くなってた人……?』
背筋が凍る……
干渉した人がまさか死んでいたなんて……
確かに目から血を流したりと生きている人だとはにわかに考えにくいが……
『偽りの国はまだまだ未確認なことが多い……完全に幽霊とは決まってない……それが怖いところだね。』
『んで、それはどうする?ほんとに幽霊とかならそのナイフのネックレスは呪物とかそういうのに近いんじゃないのか?』
『えっ?呪物………?』
渡されたのがまさかの呪物……?
ダメだ……今までいろんなことが起きすぎて頭が回らなくなってきた。
『そう……だなぁ、後で教会でも行ってみるかい?そこから…まぁ、呪物かどうかはわかるでしょ。』
『教会…?この村にあるんですか?』
『うん、結構立派なんだよそれが?まぁそれもそのはず……』
『………この村の教会は…"神様"を礼拝してるって言われてるんだ、しかも結構強力な神様なんだってさ。』
強力な神様……
確かにそれは立派な教会なはずだ…
そんな立派なら呪物か普通の物か分かるかもしれない。
『そんな立派な教会にはね、"神恩の灯火"っていう神のご加護を象徴するデッカい炎があるんだ……それで…』
『おい、注目点そこじゃないだろ………』
リベルがツッコむ。
『とまぁ……教会か……あそこ大丈夫か?人が多い、俺は罪人の紋章、ベルは異質の存在だ。まぁ俺は村人から信頼されてるからあまり気にされないとはいえ……ベルの方は……』
確かに……私が異質な存在だとバレれば……
この村から追い出されるだけじゃなく、リベルやロウワーさんもなにか影響をもたらすかもしれない。
『じゃあ私は……ここに残って待った方がいいかな…?』
『そうだねー……って、なんかもう教会行く雰囲気出してるけどあと少しで診察所開かなきゃいけないから……行くとしたら午後になるかな?』
そうだった、ここはもうすぐで使われる。
診察室も片付けなければ……
私とリベルは住居の方の建物へと移動する。
ロウワーさんは薬草………朝食を食べ終え診察所へと向かった。
生活部屋には私とリベルの2人だけが残される。
ロウワーさんが仕事を始めてから数時間……
リベルは薬草の管理などを終わらせて私のあるリビングに戻ってきた。
『……………』
ただただ沈黙……
(なにか……話した方がいいかな…?気まずいよ…)
私は椅子に座り、本を読んでいたが……正直内容は目に通して無かった。本を見るだけで、気まずさのあまり本に集中できなかった。
リベルは私と違い、ナタを磨いている。
遺跡の怪物に使ったナタだ。
『ね、ねぇ』
『ん?』
沈黙が走る。
『あ?どうしたんだ?』
どうしよう。
何も考えてないのに声掛けちゃった。
何話そう、ほんとどうしよう。
『す、好きな食べ物とかあるの?』
本当にレベルの低い質問を聞いてしまった…
『好きな食べ物……食べ物だったらなんでも好きだ、特に好き嫌いはない。』
『へぇ………あ、、そうなんだ…』
こうして話が終わってしまう。
この時あんな喋れてたロウワーさんがめっちゃすごいことに私は気づいた……
やっぱり2人は長い付き合いなのだろうか……
『リベルって、ロウワーさんと会ってからどれくらいなの?仲良さそうだったけど』
『………そうだな、わからん、まぁまぁ長い間いるんじゃないか?』
『え、分からないの?』
『詳しくは分からないが……10年…以上は一緒にいるんじゃないか?』
10年…結構長い付き合いなんだ。
だからあんなに仲良さそうにしてたんだ。
『だから、あんなに仲良いんだね』
『仲良い?あれのどこ見てそう思ったんだよ……アイツは煽りをただ楽しんでるめんどくせぇ野郎だよ……』
『……ふふっ…』
そう言いながら……きっと2人は仲が良いんだろう。
こんな2人に出会えて、私は幸せだった。
『………ベル?どうした?お前暑いのか?』
『…………"っ』
……私は気がつくと冷や汗をかいていた。
手も少し震えている。
『おいおいまさか熱中症か?しょうがねぇ…冷たいもんを……』
『………わからない…"』
よくわからない…
ただ本を読んでいて、そのあとはリベルと喋っていた。
だが今たったこの瞬間に、
何か壊れてはいけないものが……壊れてしまった気がする。
何か感じてはいけないものを感じてしまった。
『………っ"…………っ"…』
『おい、お前呼吸が少し荒くねぇか…?なんだ?なんかのアレルギーか?』
『わからない……また感じたの……変な感じ………』
『おい、お前さっきからその変なの感じすぎじゃないか……?ロウワーんとこ行くか?歩けないなら連れてくるが………』
その時だった_______
《ゴォオォォオオォオォオォォ!!"》
村全体……いや、ここら一帯が大きく揺れた。
家具や、置いてあるものがグラグラと揺れる。
だがすぐに揺れはおさまった。
『地震か………?結構強かったな………何も物倒れてねぇよな…?』
やっぱり………
まだ消えない……
この嫌な感じは……
なんなの?
《同時刻、村、教会にて_______》
『……………そんな……まさか"……っ"……』
『………っ"…!!』
『………ラルク司祭…"これって……"』
教会にいる神父達は呆然と立ち尽くしていた。
その場にいる全員、信じられないような顔をして。
『……規律にある…最悪の事態が起こってしまった………"』
ゾッ………
教会にいた助祭、司祭たちが青ざめる。
教会だけが、異様な空気になっていた。
『あ!ラルク司祭!!ここにいらしたんですね!
ついさっき仕入れが……』
1人の信徒が司祭の1人に話しかけた。
『ただちに他の信徒を連れてここから離れろ!!』
ラルク司祭と呼ばれた男がそう叫んだ。
その司祭の顔には焦りが見えた。
『えっ……?一体なにがあっ____』
『話してる暇はない!!司祭と助祭以外の人間は今すぐここから出るんだ!!時間がない!!』
『え…?あ、わ…わかりました!!』
その威圧に信徒の1人は言われた通りに他の信徒へ呼びかけ外へ出した。
『サタ!!お前はマヌレ司祭、ラグ司祭を呼んでこい!!それ以外の助祭はただちに祈祷準備!!今すぐに取り掛かれ!!』
するとサタが2人の人間を連れてきた。
まさにその2人が呼ばれていたマヌレ司祭、ラグ司祭であった。
『何があったかは聞いたが……まさか…本当だとは……"!!』
『私も長い間、司祭をしていますが…こんな事態は初めてです……』
2人も助祭と共に祈祷の準備に取り掛かる。
するとラルク司祭は突然膝から崩れ落ちる。
『……なんてことだ…こんな日が……来てしまうなんて……』
『ラルク司祭!気をしっかり!!』
助祭が声をかける。
だが司祭の焦りは止まらない。
『………"神恩の灯火"が……"消える日"が……くるとは…………神恩の灯火が完全に消えてしまえば……神が我々にご加護を与えない…見放すということになる……"!!』
だが司祭は少しずつ落ち着きゆっくりと立ち上がった。
『……すまない、私がこうなっていてはダメだ……
祈祷の準備は…?』
『もう終わります!』
やがて準備が終わる。
すると一同はその消えた灯火へ祈祷文を唱え始めた。
(神よ……どうか私たちにご加護を…!!)
(私たちをお救いください……!!)
(もう一度我々たちにご加護の光を……!!)
全員が文を唱え続ける。
祈祷が終わり、一同は灯火を見る。
『火が……つかない…?我々の祈願が届いてない……?
でもこの祈祷文は……神に我々がご加護をもたらすよう願ったものなのに……』
『違う……届いていないのではない……"届かないのだ……"』
そう司祭が言うと助祭もハッとし青ざめる。
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『……この地の神が……"何者かに殺された……"!!』
その一言が、その場にいる全員を絶望させる。
『でも殺されたとなぜ分かるのですか!?』
助祭は言う、だが司祭はこう答えた。
『神は寿命で命が尽きることはない……神は病にかかることはない……やはり神は何者かによって殺されたのだ……"!!』
何者かによって神が殺されたことがほぼほぼ確定する。
その事実がさらに全員を絶望させた。
《ズズズズズズズズ…"》
教会以外の人間はまだこれから何が起こるか知らない。
今……この地から呪われた存在が漏れでようとしているのを……
脅威となる存在が……
身近に迫っていることを……




