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偽りの国のヴェリタ   作者: 楽楽
序章  堕ちた世界
13/20

第13話  見捨てられし者

私たちは危険な存在、まさに禁忌に触れてしまったのかもしれない。

最初みんなはただの負傷者…男性だと思っていた。

別に見た目が危険だったわけじゃない。中……内側に潜む危険に気付けなかった。


『………っ"…』


私は声が出なくなった。

声を出すことを忘れてたのか…

でもなんでだろう、今ここにはリベルもロウワーさんもいるのに……遺跡の時よりも震えが止まらない。


だけど……ここで出ればよかった。

震えている足を必死に動かしてでも、外に出ればと…

私は後に後悔する。

この後に起きる惨劇を目の当たりにして。


《ズゥアァァッ!!》


すると黒いオーラが具現化し、私たちを包み込んだ

辺りがどんどん黒く……そして暗くなっていく。

暗くなって行くためよくわからなかったが、体が沈んでいるような気もした。


『ベル!!』


リベルが叫び、私へと手を伸ばした。

私も手を伸ばし……リベルの手を掴もうとする。

だがその手は届くことはなく…闇へと引き摺り込まれていく。


『リベ_____』


名前を言い終える前に、全身が沈む。

だが沈んだと思ったら息ができない、なんてことはなく呼吸はすんなりできた。

水に落ちたような感覚だったが……違うのだろうか?


『……リベル?ロウワーさん…?どこ……?私……あれ…?水に落ちたと思ったんだけど…』


周りには暗闇が続く…。

その暗闇に私の声が吸い込まれて行くような感じがした。

とても不気味……

なぜか自分の手、姿ははっきりと見えた。

ここはどこなのだろうか?

沈む前……謎の男から黒いオーラみたいなのが放たれて私たちを包み込んだ……

そして沈み、気がつくとここにいた…


《……………》


『……!?』


私は気配を感じ、咄嗟に振り返る。

そこにはあの謎の男がいた。

だが男の元には…3人の人骨が置いてあった。

男は下を俯いたまま小声でブツブツと何か言っている。


『……っ"!!』


一歩、後ろへ下がった。

もう一歩。

けれど、足がそれ以上動かなかった。

目の前の男は遺跡で見た怪物よりも危険な存在…


《…………い…"つ…も……》


すると謎の男の声だろうか…?

今度はハッキリ聞こえた。

よく聞くと診察室で聞いたあの声はこの声と同じだった。


《……運命は…俺たち………を見捨て……る…》


運命は…俺たちを見捨てる…?

何を言っている…?


《……運命…は……常に強者を見て……いる…》


運命は常に強者を見ている……

今度はそう聞こえた。

強者…?運命…?

関連性のない単語を言っている…


《………お…"まえ……も…"…》


次の瞬間、謎の男は私を指さした。

その俯いた顔は……ゆっくりと上がり…


《…………見捨てられし者だ》


その顔は汚れ、片目に関しては…涙の代わりに血が流れている…

まるで全てに絶望した……そんな顔だった。


ズッ……

私の足に何かが当たる。


『何か当たった……?』


私が気になりそこを見ると……


『……っ"!!』


見たくなかった。

なんで………


『ロウワーさん……?リベル…………?』


私はそれを目にし、感情を抑えられない。

否定したかった。

2人からは血が流れている。

でも不思議だ、怖いのに、悲しいのに…

どうして涙は出ない?

特に片目は……あれ?何も感じない?とうとうおかしくなってしまったのだろうか。

すると2人の血が足へと広がる。


その血の反射に写っていた私は片目がなくなっていた、あの男と同じように

目からは涙のように血が流れる。

でも自然と痛くない。でも痛みはある。

身体的な痛みではなく……心、内側……

胸が裂けそう……そんな感じだった。

その光景を見て私は言葉が出なかった。


《…………死……ね…ない……ま……だ…》


またあの男の声……

だが今度の声は少し悲しんでいるような声だった。

死ぬのを拒んでいる…?


『…………あなたは……なにがしたいの!!』


私は感情がぐちゃぐちゃになり少し声を荒げてしまう。

だがもう抑えられない。

会ったばかりとは言え、人の死を見せられ気分は不快の絶頂にあった。


《……………"敵"への……》


《………………復讐……》


男は確かに……復讐と言った。

その声には…憎しみと悲しみが混ざり合い、黒く濁った……そんな声だった。


『……敵への…復讐……?敵…?に何かされたの…?』


《………わか……らない……だ…が……》


《俺の魂が……敵を殺せと……言っている………》


敵を殺せ……?

それに分からないって……私と同じ記憶を失っているのだろうか?

だが不思議と…その男性からは私に対する敵意などは感じられなかった。

憎しみ…それは感じる。

でも私に向けられたものじゃない、むしろ私に向けられているのは言葉では言えないほどの悲しみだった。


『………貴方に何があったのかはわからない…でも、私も貴方が私の仲間にしたことは…許さない…』


その男に何かがあったとしても…私は許せなかった。

私の目には片目に涙……片目には血の涙を浮かべた。

次の瞬間、近くにあったリベルとロウワーさんの遺体が塵となって消える。


『……リベル!!ロウワーさん!!』


私は目の前で仲間が消えるのを見てしまう。


『………なんで!!』


《……それは……俺が…見せた……幻……影…》


ん?今……なんて言った?

彼は今…幻影と……

つまり私が見たあの2人は存在しないもの……?


『……なんでそんなことを……貴方は一体何が…?』


状況は追いつかないが……とりあえず2人が生きていると言うことはわかった。

じゃあ本当にこの男は何がしたいのだろうか?


《…………探し……て……くれないか……》


男は静かにそう言った。


『……探す…?何を……?』


《………この"不屈の憎悪"を…その核心を……》


男は不屈の憎悪……そう言った。

彼も私…記憶を失っている…?その上…不屈の憎悪?

の核心探しを私に求めている…?

でも……私にはわかる。

不屈の憎悪と言っても……彼の声からは計り知れない悲しみが溢れている。

きっと長い間……1人でその不屈の憎悪に苦しんで来たのだと。


遺跡の私と同じ。

恐怖で怯えていた私を……リベルは助けてくれた。

私も……目の前で悲しんでいる…助けを求めている人の手を握ってあげたい。


『…………探すよ。貴方のその苦しみを……長い間苦しめていた憎悪の核心を……私が探してあげる』


私はそう言った。

その声に……私が男に対する憎しみはもうなかった。


《………………っ!!》


男は私の返事を聞き驚いていた。

だが次の瞬間、私の視界がぼやける。

意識が朦朧としてきたのだ。


『え……あれ………?』


私の意識が失いかける。

だがそんな中。


《………………感謝する》


最後に男の声が聞こえた。

男はそう言い残した。

そんな声と共に、私の意識は消えていった。








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